万が一ミスや抜け漏れがあると、適切な後遺障害認定を受けられなくなってしまう可能性があるんだ。
今回の記事では、後遺障害診断書の書き方やチェックが必要な項目について、詳しく見ていこう。
後遺障害等級認定を受けるには、医師に後遺障害診断書を作成してもらわねばなりません。
後遺障害診断書の記載内容によっては等級認定を受けられなくなったり認定される等級が下がってしまったりする可能性もあります。
被害者としてもどのような内容が書いてあるのか、どのように書いてもらうのが適切か、把握しておく必要があるでしょう。
今回は後遺障害等級認定で非常に重要な後遺障害診断書の記載内容をお伝えします。
これから後遺障害等級認定の申請をされる方はぜひ参考にしてみてください。
目次
後遺障害診断書の記載内容
後遺障害診断書とは、後遺障害等級認定を受けるときに必要な診断書です。
症状固定したタイミングで担当医師に作成を依頼すれば、作成してもらえます。
後遺障害診断書の内容次第で後遺障害等級を取得できるかどうかが変わってくるため、被害者にとっては非常に重要な書類といえるでしょう。
後遺障害診断書には、以下のような内容が記載されます。
- 患者の基本情報
まずは病院にかかっている被害者本人(患者)の基本的な情報が記載されます。
氏名や生年月日、住所などです。 - 受傷日時
事故の日付が記載されます。 - 症状固定となった日付
医師が症状固定と認定した日が記載されます。
症状固定とは「それ以上治療を続けても効果が上がらなくなったタイミング」です。
症状固定した時点で残っている症状が後遺障害等級認定の対象になります。 - 入院期間、通院期間
事故から症状固定するまでにかかった通院日数や入院日数が記載されます。 - 傷病名
頭蓋骨骨折や頸椎捻挫、外傷性頸部症候群などの傷病名が記載されます。 - 既存障害
事故前からあった症状を記載します。
たとえばもともと椎間板ヘルニアなどの症状がある場合には、症状が出ていても「既存の椎間板ヘルニアによるもの」と判断されて後遺障害等級認定を受けられなくなる可能性があります。
既存障害のある方は、ここにどういった記載がされるのかしっかり確認し、間違いがあったら訂正を求める必要があります。 - 自覚症状
自覚症状とは「痛い、しびれる」などの患者が自覚する症状です。
患者の訴えをもとに医師が診断書へ記載します。
むちうちのケースなどでは自覚症状の記載が非常に重要となる可能性があるので、この欄には正確に詳しく記載してもらう必要があります。 - 各部位の後遺障害の内容(検査結果および他覚症状)
「各部位の後遺障害の内容」の項目には、検査結果や他覚症状が記載されます。
検査には、MRIやレントゲン、CTなどの画像検査、神経学的検査や視力検査、聴力検査などがあります。
後遺障害等級認定に必要な検査を受けていないと認定される可能性が大きく低下してしまうので、もれなくしっかり検査を受けることは被害者にとって極めて重要です。
他覚症状とは、医師が客観的に把握できる症状です。
患者しか自覚できない症状を「自覚症状」というのに対し、医師などの第三者が検査によって客観的に確認できる症状を「他覚症状」というのです。 - 今後の見通しに関する見解
今後、症状がどのような経過をたどると予想されるのか、医師の見解が記載されます。
たとえば「増悪」や「緩解」などです。
「緩解」などと書かれてしまったら、自賠責で「後遺症が残らない」と判断されて後遺障害等級認定を受けにくくなってしまいます。
今後の見通しに関する見解の部分も交通事故被害者にとって非常に重要といえるでしょう。
後遺障害診断書で重要な内容とは
後遺障害診断書で特に重要な内容を示します。
医師から受け取ったときにはしっかりチェックしましょう。
各部位の後遺障害(他覚症状や検査結果)を記す項目
まずは各部位の後遺障害の内容(他覚症状や検査結果の項目)が重要です。
ここで必要な検査を受けられていない場合や、検査結果が後遺障害の症状に合致していない場合などには後遺障害等級認定を受けられません。
必要な検査が実施されているか確認すべきですし、結果の記載方法についても精査する必要があります。
後遺障害等級認定の際にはMRIなどの各種の検査結果資料も一緒に提出しなければなりません。
その内容と記載内容が一致してるかどうかも確認しましょう。
自覚症状
患者の自覚症状を書く欄も重要です。
特に自覚症状しかないむちうち(MRIなどの画像検査によっては異常が検知されないケース)では、患者の自覚症状に関する訴えをもとに後遺障害等級認定するしかありません。
検査結果による立証が難しい場合、自覚症状にどういった記載がなされるか、被害者としても大いに関心をもって確認すべきです。
今後の見通し
医師による「今後の見通し」の見解部分も重要です。
ここに「緩解(寛解)」などと書かれてしまったために後遺障害等級認定を受けられなくなってしまう方が実際にいます。
後遺障害等級認定を受けるには「不明」「増悪」などと記載してもらう必要があるでしょう。
内容をチェックしたときに「寛解」などと書かれていたら、本当に良くなる可能性があるのか、あるとすればどのくらいなのか医師に確認しましょう。
もしも良くなる可能性が低いなら、提出前に後遺障害診断書を書き直してもらうべきです。
後遺障害診断書以外の書類が必要なケース
必要な書類を提出しないと、後遺障害認定を受けにくくなってしまうから注意しよう。
交通事故で後遺障害等級認定を受けるため、後遺障害診断書以外の書類が必要なケースもあります。
たとえば脊髄損傷の場合
- 「脊髄症状判定用」
- 「脳損傷又は脊髄損傷による障害の状態に関する意見書」
- 「神経学的所見の推移について」
などの書類を医師に作成してもらわねばなりません。
高次脳機能障害の場合にも
- 「頭部外傷後の意識障害についての所見」
- 「神経系統の障害に関する医学的意見」
という書類を後遺障害診断書とは別途、作成してもらわねばなりません。
患者自身やその家族が「日常生活状況報告」という書類も作成する必要があります。
これらの書類も後遺障害等級認定の結果に多大な影響を与えるので、適切な方法で作成しましょう。
後遺障害診断書を受け取ったら
自分自身で医師に訂正を依頼し難い場合には、弁護士に依頼するのがおすすめだよ。
医師から完成した後遺障害診断書を受け取ったら、必ず内容を確認しましょう。
自賠責保険へ提出してしまったら、撤回や取り戻しは基本的にできません。
訂正が必要な場合の対処方法
後遺障害診断書を受け取ったら、氏名や生年月日などの基本情報、事故日(受傷日時)や入通院の期間など、すぐにわかる部分を確認しましょう。
その上で、自覚症状の欄をしっかりチェックしてください。
必要事項が漏れていたり間違っていたりすると、訂正してもらわねばなりません。
内容的に訂正が必要な場合、医師に訂正を依頼しましょう。
基本情報などの簡単な間違いであっても、患者が勝手に書き直してはなりません。
追加の検査が必要な場合の対処方法
受傷内容や後遺障害の内容によっては追加の検査が必要な状況もありえます。
その場合には、医師に後遺障害等級認定に必要な検査の内容を伝えて実施してもらいましょう。
後遺障害診断書を書いてもらった後からでも検査はできます。
必要な検査がわからない場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談すると教えてもらえる場合があるので、相談してみるのも対処方法の1つです。
医師に訂正や追加検査を断られた場合
医師に後遺障害診断書の訂正や追加の検査を依頼しても、断られるケースが珍しくありません。
その場合、あきらめずに対応を弁護士に任せましょう。
弁護士が事情を説明してお願いすれば、医師も対応してくれる可能性があります。
後遺障害認定を弁護士にお任せする方が良い理由
その他にも、弁護士基準で慰謝料を計算することが出来るようになるから、慰謝料が高額になるというメリットもあるよ。
交通事故でより確実に後遺障害等級認定を受けたいなら、弁護士へ手続きを依頼しましょう。
以下で弁護士に依頼した方が良い理由をお伝えします。
等級認定を受けやすくなる
後遺障害等級認定を申請するなら、症状に応じた認定を受けるべきです。
しかし自分で手続きをすると、本来よりも低い等級にされたり「非該当(後遺障害が残っていない状態)」とされてしまったりするケースも少なくありません。
特に手続きを「事前認定」の方法で進めてしまうと、後遺障害等級認定の手続きに被害者がほぼ関与できないので、理由がわからないまま非該当になってしまうことも多々あります。
弁護士に依頼したら、被害者から事情を聞いたり検査結果を精査したりして、等級の認定を受けやすくなるものです。
自分で対応するより適切な等級認定が行われやすくなるメリットがあるといえるでしょう。
被害者請求をスムーズに進められる
後遺障害等級認定の手続きには「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
事前認定は加害者の保険会社へ手続きを任せる方法、被害者請求は被害者自身が後遺障害等級認定を行う方法です。
事前認定の場合、保険会社に全面的に手続きを任せてしまうので、被害者にとってはどのような対応をされているかわかりません。
積極的に資料提出をしにくく、被害者側に不利になってしまうことも考えられます。
一方、被害者請求は非常に面倒で手間がかかるので、多くの被害者にとってはハードルが高いのが現実です。
弁護士に任せると、面倒な被害者請求の手続きをお願いできるので、被害者に有利な書類を集めて等級の取得を目指せます。
手間なくスムーズに被害者請求を行って高い等級の認定を目指せるメリットがあるといえるでしょう。
弁護士基準で計算できる
後遺障害等級認定を受けられたら、保険会社との示談交渉を開始します。
このときいくら支払うかを決めるため、慰謝料の計算をしなければなりません。
ところが保険会社の基準は弁護士の基準より低くなっており、被害者が自分で対応すると慰謝料額を下げられてしまいます。
弁護士に依頼すると適正な弁護士基準で計算できるので慰謝料が高額になるメリットがあります。
まとめ
交通事故で後遺症が残ったら、適切な方法で後遺障害等級認定を進めるべきです。
自分で対応するよりも後遺障害診断書の読み方にも長けた弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。
後遺障害診断書作成の際には、交通事故を積極的に取り扱っている弁護士の無料相談を利用してみるようおすすめします。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。