支払う事ができない可能性もあるから、弁護士に依頼するのを躊躇してしまうよ・・・
早速チェックしてみよう。
交通事故のトラブルに巻き込まれた場合、弁護士に依頼すると、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?
弁護士事務所のホームページを見ても、費用体系が複雑すぎて、なかなか理解することはできません。
「ホームページの料金表を見たけど、結局いくらかかるのか分からない」という方はたくさんいらっしゃいます。
弁護士費用をきちんと理解していれば、安心して弁護士に頼むことができます。
反対に、料金体系をきちんと理解していないと、「最終的に赤字になったらどうしよう」という心配が残ってしまいます。
せっかく弁護士に依頼するのですから、不安はなくしておきましょう。
そこで、今回は、弁護士費用の仕組みについて分かりやすく解説します。
目次
弁護士費用の内訳
弁護士費用がややこしく見える原因は、「弁護士費用の内訳として、たくさんの項目がある」ということです。
下記では、弁護士費用の項目について、一つずつ説明していきます。
相談料
相談料とは、「弁護士に直接会って交通事故について相談をして、アドバイスをしてもらうための費用」です。
相談料を払えば、事故の状況を詳しく説明したうえで、弁護士にいろいろな質問をすることができます。
「自分のケースでは裁判をした方がよいのか」
「損害賠償としてどれぐらいの金額を請求することができるのか」
などについて、弁護士が丁寧に答えてくれます。
弁護士の法律相談料の相場は、「30分5,000円」です。
交通事故の場合は、初回の相談に「およそ1時間から1時間半ほど」かかります。
つまり、交通事故の相談料の相場は「およそ10,000円から15,000円」です。
事故の状況やケガの様子を説明しなければならないので、「最低でも1時間はかかる」と考えておきましょう。
相談料は、あくまで「弁護士からおおまかな方針をアドバイスをしてもらうための費用」です。
相談料を払ったからといって、相手方との交渉を引き受けてもらえるわけではありません。
裁判をしてもらえるわけでもありません。
なお、交通事故の案件に力を入れている事務所では、「初回の相談料無料」としていることもあります。
無料相談を利用すれば、初回の相談料を節約できるので、非常にオトクなサービスです。
着手金
弁護士に相談したうえで、「この人に事件の交渉をお願いしたい」と考えた場合は、その弁護士に事件の交渉をお願いすることになります。
弁護士に事件を依頼する際には、依頼者は「着手金」というお金を支払います。
着手金とは、「弁護士に事件の交渉を引き受けてもらうための料金」です。
着手金は、交渉を引き受けてもらうためのお金なので、必ず最初に支払わなければいけません。
着手金を支払わなければ、弁護士が仕事を開始することはありません。
注意すべき点は、「事件の交渉が失敗しようが成功しようが、着手金は戻ってこない」という点です。
着手金は、「交渉を開始するための費用」です。
交渉の結果に関係なく、「相手方と交渉してもらうこと」に対して支払う費用です。
そのため、相手方から満足のいく損害賠償員を獲得することができなくても、着手金を返還してもらうことはできません。
途中で弁護士を変更したり解任することになっても、着手金は戻ってきません。
それでは、着手金としてどれぐらいのお金が必要となるのでしょうか?
着手金の相場は、おおよそ「経済的利益の3〜8%」です。
例えば、事故の加害者に対して、治療費や慰謝料など、合わせて300万円を請求するケースを考えてみましょう。
着手金の計算では、この「300万円」を経済的利益として計算します。
このケースでは、着手金の相場は「9万円〜24万円」となります。
なお、交通事故に力を入れている事務所では、「交通事故の着手金は無料」としていることがあります。
一見オトクに見える制度ですが、このような事務所では成功報酬(*成功報酬金については、下記で説明しています)を高めに設定していますので、最終的な費用はそれほど変わりません。
ただし、着手金無料の事務所であれば、最初に支払うお金を節約できるので、「とりあえずの手持ちのお金が無くて、着手金を支払うことができない」という方にとっては、便利な制度です。
成功報酬
成功報酬とは、「事件の交渉が成功したことに対して支払う報酬」です。
弁護士が交渉を行い、それによって損害賠償金を獲得することができた場合、交渉が成功したことについて報酬を支払います。
成功報酬の相場は、「相手方から獲得した損害賠償金額の6〜16%」です。
例えば、弁護士の交渉が成功して、加害者から300万円の損害賠償金を獲得した場合には、成功報酬はどれぐらいかかるのでしょうか?
成功報酬の相場は、「加害者から獲得した300万円の6〜16%」です。
つまり、およそ「18万円から48万円」となります。
それでは、もし交渉が失敗に終わり、相手方から損害賠償金を獲得することができなかった場合は、どうなるのでしょうか?
成功報酬は、「交渉が成功した場合に限り、支払う費用」です。
相手方から損害賠償金を獲得することができなかった場合には、成功報酬を支払う必要はありません。
手数料
通常の法律事務所では、弁護士費用は「着手金」と「成功報酬」の2種類のみです。
しかし、法律事務所の中には、着手金のことを「手数料」と呼んでいることがあります。
他にも、「前払金」や「前金」と呼んでいることがあります。
もしも、あなたが相談に行った弁護士事務所で「手数料」や「前払金」という呼び名をしている場合は、念のため「これは他の事務所では着手金と呼ばれているものですか?」「着手金や成功報酬とは何が違うのですか?」と確認しておきましょう。
日当
日当とは、「弁護士が1日当たりに働いた仕事に対して支払う報酬」です。
通常の交通事故のケースでは、日当が請求されることはありません。
弁護士から料金の説明を受ける際に、「日当」という言葉が出てこないことがあります。
通常のケースでは日当がかからないため、説明が省略されているのです。
しかし、特殊なケースでは、日当が請求されることがあります。
日当が必要となるのはどのようなケースなのでしょうか?
日当が必要となるのは、「遠方の裁判所で裁判を訴訟を起こす必要があるケース」や、「弁護士が現場検証のために交通事故の現場に行かなければいけないが、事故現場が遠方にあるため、現場に行くのに時間がかかるケース」などです。
このような場合については、日当が請求されることがあるので、注意しましょう。
例えば、東京の弁護士に依頼したのに、北海道の裁判所で裁判をする必要があれば、北海道の裁判所に行くための日当がかかります。
この場合の相場は、一回当り「およそ2〜3万円」です。
交通事故の現場が遠方である場合や、加害者が遠方に住んでいるケースなど、日当がかかる可能性がある場合には、「日当はかかりますか?」「かかるとしたら総額はどれぐらいになりそうですか?」と必ず確認しておきましょう。
通常の交通事故のケースであれば、日当が請求されることはありませんので、心配する必要はありません。
実際にかかる費用例
それでは、一般的な交通事故のケースでは、総額として、いくらぐらいの弁護士費用がかかるのでしょうか?
交通事故に巻き込まれて、2ヵ月ほど入院したケースを考えてみましょう。
この場合、入院にかかった治療費や慰謝料を請求することができます。
また、入院している2ヶ月間は、仕事を休まなければいけませんので、お給料が減ってしまいます。
この場合、生活費が減ってしまったことに対して、「休業損害」を請求することができます。
以上のようなケースでは、損害賠償金の総額はおよそ500万円となります。
一般的な法律事務所では、下記のような費用体系が報酬基準となっています。
- 着手金:5%
- 成功報酬:10%
このような事務所の弁護士に依頼すると、費用の総額は下記のようになります。
- 着手金:500万円×5%=25万円
- 成功報酬:500万円×10%=50万円
- 弁護士に支払う総額:75万円
- あなたが最終的に獲得する金額:500万円ー75万円=425万円
このようなケースでは、損害賠償金が弁護士費用を大幅に上回るため、赤字となることはありません。
安心して弁護士に依頼することができます。
加害者に請求できるケース
交通事故の裁判では、弁護士費用の一部を相手方に負担させることができます。
相手方のせいで交通事故に遭ったわけですから、相手方が負担することは当然のことです。
ただし、全額を負担させることができるわけではありません。
裁判で認められるのは、おおむね「損害賠償金の10%」です。
例えば、損害賠償金が500万円のケースでは、「およそ50万円」を弁護士費用として相手方に負担してもらうことができます。
ただし、気をつけばければいけない点が2つあります。
- 裁判を起こして判決まで持ち込んだ場合に限り、相手方に負担させることができる
一般的に、示談交渉や和解で解決する場合には、相手方が弁護士費用を負担してくれることはありません。
裁判で判決になった場合に限り、「裁判という大がかりな事件になったのだから、弁護士費用は加害者が負担するべきである」と裁判官が考えるため、相手方に負担してもらうことができるのです。 - 相手方の過失によって引き起こされた事故に限り、相手方に負担させることができる
相手方の不注意によってあなたが交通事故に巻き込まれたのであれば、相手方が費用を負担することは当然のことです。
しかし、あなたが脇見運転をしていた場合や、あなたが信号無視をした場合には、あなたのせいで相手方が交通事故に巻き込まれたわけですから、相手方に費用を負担してもらうことはできません。
裁判となった場合には、事故発生から支払い日までの遅延損害金の賠償を受ける事も可能です。
弁護士特約を使えば持ち出しは無し
自分が加入している自動車保険のオプションとして、弁護士特約の保険料を支払っている場合には、弁護士費用が掛かってしまう事なく、弁護士に依頼できる事があるんだよ。
車両保険に入っている場合は、「弁護士費用特約」というものが付いていることがあります。
これは、「交通事故に巻き込まれた際に、弁護士費用を任意保険会社が負担する」という特約です。
この特約に入っていれば、弁護士費用を心配する必要はありません。
交通事故に巻き込まれた際にも、慌てる必要はありません。
非常に便利な制度です。
車両保険に入っている方は、今すぐに、弁護士費用特約が付いているかどうか確認しておきましょう。
交通事故に巻き込まれた場合は、パニックになる方が多く、弁護士費用特約が付いているかどうかを確認することを忘れてしまう方がたくさんいらっしゃいます。
せっかく保険に入っているのに、弁護士費用特約を使いそびれてしまうかもしれません。
弁護士費用特約が付いていることが分かっていれば、交通事故に巻き込まれた場合に落ち着いて対応することができますので、今のうちに確認しておきましょう。
弁護士特約に入っているかどうかは、保険に加入した際の「加入申込書」や「保険契約書」に記載されています。
書類が見つからない方は、保険会社に電話してみましょう。
「自分が加入しているプランでは、弁護士費用特約は付いていますか?」と質問すれば、すぐに答えてもらえます。
弁護士費用特約に入っていれば、交通事故の弁護士費用を保険会社に支払ってもらうことができます。
「弁護士費用が赤字になったらどうしよう」という心配をする必要はありませんから、費用のことを気にすることなく、安心して弁護士に依頼することができます。
ただし、「保険会社によっては、特約が使えるかどうかについて様々な制限を付けている」ということがあるので注意しましょう。
例えば、「裁判を行う場合には弁護士費用を支払うが、調停や交渉の段階では支払わない」という制限が付いていることもあります。
また、「弁護士費用として300万円までは保険会社が支払うが、それ以上は支払わない」という制限が付いていることもあります。
しかし、このような制限が付いていても、弁護士費用の一部を支払ってもらえるわけですから、やはりオトクな制度です。
交通事故に巻き込まれた場合には、落ち着いて特約の内容を確認することができなくなってしまいます。
今のうちに、特約の内容をきちんと確認して、事故に備えておきましょう。
弁護士費用が賠償額を上回るケース
弁護士費用は、「着手金」と「成功報酬」の2大柱によって成り立っています。
相手方から多額の損害賠償を獲得することができた場合には、余裕を持って弁護士費用を支払うことができますが、獲得金額が少ない場合には、弁護士費用を支払うことで赤字になってしまうケースもあります。
「どのようなケースで赤字になるか」というボーダーラインがはっきり決まっているわけではありません。
おおよその目安としては、「損害賠償金が50万円を超えるかどうか」ということが基準となります。
損害賠償が50万円を超えるようなケースでは、弁護士費用が赤字になる可能性は高くありません。
しかし、損害賠償が10万円や20万円におさまる場合には、弁護士費用を差し引くと、最終的に赤字となってしまう可能性があります。
一般的には、大規模な事故のケースでは、弁護士費用が赤字となる可能性は低くなります。
例えば、事故によって手術をしたケースや、骨折をして何ヶ月も仕事を休まなければいけなかったというケースでは、損害賠償額は多額となります。
入院期間が数ヶ月に及んだ場合も、損害賠償金は高くなります。
このようなケースでは、弁護士費用が赤字となる可能性は高くありません。
注意すべきケースは、むちうち等の比較的症状が軽いケースです。
一般的に、むちうちは交通事故との因果関係の立証が認められにくく、後遺障害の等級認定も難しいため、損害賠償額が低く抑えられる傾向があります。
残念ながら、損害賠償金が20万円以下におさまることも珍しくありません。
比較的症状が軽いケースでは、弁護士費用が赤字となってしまうリスクがありますので、弁護士に依頼する前にきちんと費用について質問しておきましょう。
赤字となるかどうかの判断は、専門家でも難しい問題です。
費用について心配がある方は、まずは弁護士に相談して、「赤字となる可能性があるか」「あるとしたらどれぐらい赤字となりそうか」ということを質問しておきましょう。
弁護士と聞くと、「費用がかかる」というイメージがあるかもしれません。
確かに、事故の状況によっては、弁護士費用は多額となることがあります。
しかし、損害賠償金を差し引けば、赤字とならないことがほとんどです。
交通事故でお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士に相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。