今回の記事では、バイク事故で残りやすい後遺症について、詳しく説明するね!
バイク事故では、ライダーの身体がむき出しなので自動車の事故以上に当事者が大けがをする可能性が高くなります。
当然、後遺症が残るケースも多くなっています。
この記事では、バイク事故でどのようなけがや後遺症が多いのか、バイク事故で後遺症が残ったときに「後遺障害認定」を受ける必要性や支払われる慰謝料、賠償金について解説します。
目次
バイク事故で多い怪我の種類
バイク事故とは、バイクが当事者となる事故です。
バイクと自動車が接触する事故やバイク同士の事故などがあります。
バイク事故の場合、四輪車のように鉄の外壁に守られていないのでライダー側のけがが重傷化する傾向があります。
特に多いのは、以下のようなけがです。
頭や顔面のけが
バイクで転倒すると、頭部や顔面部を損傷するケースが多々あります。
目や耳、口や鼻を損傷したり意識障害が発生したりします。
特にヘルメットをきちんと被っていなかった場合に受傷の危険性が高くなるので、バイクに乗るときには必ずフルフェイスのヘルメットを正しい方法で装着しましょう。
足のけが
バイクで転倒すると、足を骨折する例も非常に多くなっています。
骨折が後遺症につながる例もよくあるので、バイクに乗るときには少なくとも長ズボンを身に付け、できるだけブーツなどの足を守る靴を履きましょう。
腕や手のけが
バイクで転倒した衝撃で地面に手をつき腕の骨折などの大けがをする事例も多々あります。
バイクに乗るときには必ず長袖の服を身につけて手袋も装着しましょう。
神経系統の損傷
バイク事故の後「まひ」が残った人を見かけたことはありませんか?
バイク事故では「脊髄損傷」などによって神経系統が損傷を受けてしまう例が非常に多くなっています。
ときには手足に麻痺が残ってまったく動けなくなってしまうケースもあるので要注意です。
体幹、内臓のけが
バイク事故では、バイクが被害者の身体に覆い被さるなどして胸腹部に大きな損傷を受けるケースもあります。
その場合、肺や心臓、胃腸や肝臓などの大切な臓器に後遺症が残る可能性が高くなります。
バイク事故では全身のさまざまな部位に重度のけがをする可能性があります。
慎重に運転して事故防止に努めることはもちろん、万一事故に遭ったときのためにヘルメットや防護服などによって身体を守ることが大切です。
バイクで認定される後遺障害
バイク事故で残りがちな後遺症とその等級について、詳しく説明するね。
バイク事故でけがをしたら、どのような後遺障害が認定される可能性があるのでしょうか?
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、頭部を損傷したときに脳の「認知機能」が低下したり失われたりする後遺障害です。
物を覚えられない、集中力の低下、計画性がなくなる、言動が子どもっぽくなる、怒りっぽくなる、当たり前の日常動作ができなくなる、言葉が出なくなるなど「認知症」に似た症状が出ます。
重度な場合には常に介護が必要となって後遺障害1級が認定されるケースもあります。
遷延性意識障害
頭部を損傷し意識を失って回復しない障害で、いわゆる「植物状態」です。
事故後3か月以上継続して意識が回復せず自力移動や自力摂食、排泄のコントロールができないなどの状態が続くと遷延性意識障害と診断されます。
認定される後遺障害等級は1級です。
咀嚼・言語機能の障害
交通事故で口を損傷することにより、物を噛んで飲み込めなくなったり言葉を話せなくなったりする障害です。
どの程度話せなくなったのか、食べられなくなったのかによって認定される等級が異なります。
たとえば咀嚼と言語の機能の両方を完全に失った場合には1級が認定されます。
視力障害や調節機能障害、運動障害など
交通事故で目を受傷すると、失明、視力障害、目のピントを合わせられなくなる調節機能障害、眼球の運動を適切にできなくなる運動障害、まぶたを開け閉めできなくなる障害などが起こります。
目の後遺障害でも、障害の種類や程度に応じて等級が認定されます。
たとえば両眼を失明した場合には1級となります。
外貌醜状
交通事故で顔や頭、首などを受傷すると、治療を受けても傷跡が残ってしまうケースがあります。
傷跡が一定以上の大きさになっていると「外貌醜状」として後遺障害認定されます。
外貌醜状で認定される可能性のある等級は7、9、12級です。
腕や脚の欠損障害、機能障害、変形障害、短縮障害
腕や脚を受傷すると、一部を離断して失ったり関節を動かせなくなったり、骨が変形したり片方の足だけが短縮したりする後遺障害が残る可能性があります。
障害の種類や程度に応じて等級が認定され、たとえば両腕や両足を根元から失った場合には1級が認定されます。
神経障害
神経障害とは、交通事故で脊髄や延髄などの神経を損傷することによって発生する麻痺を中心とする後遺障害です。
排便排尿障害、呼吸障害など、全身に症状が広がるケースも多々あります。
神経障害の場合にも程度に応じて後遺障害の等級が認定されます。
四肢麻痺が起こったケースなど重症の場合、1級が認定される可能性もあります。
内臓の障害
交通事故で内臓を受傷した後に臓器が働かなくなって後遺障害が残るケースがあります。
肺に障害が残ると自力呼吸が困難となりますし、心臓に障害が残るとペースメーカー等の設置が必要になります。
消化器系や腎臓に後遺障害が残るケースもあります。
内臓の障害についても部位や程度に応じて後遺障害の等級が決まり、常時介護を要する状態になれば1級が認定される可能性もあります。
バイク事故で後遺症が残ったとき後遺障害認定を受ける必要性
手続は面倒かもしれないけれど、後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害認定を取得するようにしよう。
バイク事故で後遺症が残っても、「後遺障害認定」を受けなければ後遺症についての補償を受けられません。
慰謝料や逸失利益といった賠償金を受け取るには、自賠責で「後遺障害」として認定される必要があります。
自賠責で後遺障害認定を受けると1級から14級までの「等級」をつけられて、認定等級に応じた「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」が支払われます。
バイク事故で後遺症が残ったら、必ず適切な方法で後遺障害認定の手続きを進めましょう。
後遺障害慰謝料は入通院慰謝料とは別に払ってもらえる
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
交通事故で身体を動かせなくなったり醜状が残ったりすると、被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、程度に応じて慰謝料が支払われます。
後遺障害慰謝料は、通常のけがに対する「入通院慰謝料」とは別に払われるので、後遺障害認定を受けると慰謝料の金額が大幅に上がります。
後遺障害逸失利益を請求できる
後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下して得られなくなった将来の収入です。
後遺障害が残ると身体が不自由になり、労働効率が低下するので将来得られるはずだった収入を得られなくなると考えられ、逸失利益として損害賠償請求できます。
逸失利益を請求できるのは、事故前に働いていた人や主婦、子ども、学生です。
無職の方や配当収入などの不労所得で生活していた方、年金生活者には後遺障害逸失利益が認められません。
後遺障害逸失利益の金額も、認定された等級が高いほど高額になります。
後遺障害の等級によって異なる慰謝料
等級によって異なる慰謝料の金額をチェックしてみよう。
バイク事故で後遺障害認定を受けたら、どの程度の慰謝料が支払われるのでしょうか?
バイク事故による後遺障害慰謝料の相場
バイク事故のケースでも、後遺障害慰謝料の計算方法は四輪車同士の事故と同じです。
バイクだから安くなったり高くなったりすることはありません。
後遺障害の等級ごとの慰謝料の相場は以下の通りです。
等級 |
弁護士・裁判基準 |
自賠責基準 |
1級 |
2800万円 |
1100万円(要介護1600万円) |
2級 |
2370万円 |
958万円(要介護1163万円) |
3級 |
1990万円 |
829万円 |
4級 |
1670万円 |
712万円 |
5級 |
1400万円 |
599万円 |
6級 |
1180万円 |
498万円 |
7級 |
1000万円 |
409万円 |
8級 |
830万円 |
324万円 |
9級 |
690万円 |
245万円 |
10級 |
550万円 |
187万円 |
11級 |
420万円 |
135万円 |
12級 |
290万円 |
93万円 |
13級 |
180万円 |
57万円 |
14級 |
110万円 |
32万円 |
交通事故の慰謝料の計算基準には複数あり、上記の「弁護士・裁判基準」は弁護士や裁判所が利用する法的な基準です。
自賠責基準は自賠責保険が保険金を計算するときに使う基準です。
自賠責保険は最低限度の補償しかしないので、金額は弁護士・裁判基準の2分の1~3分の1程度となります。
上記以外に「任意保険基準」もあります。
これは各任意保険会社が独自に定めている基準で、被害者が任意保険会社と示談交渉する際に適用されます。
金額的には自賠責基準に近いので、法的基準よりは大幅に低額になります。
どの基準で計算しても認定等級が上がると慰謝料の金額も高額になるので、後遺障害認定申請をする際には「なるべく高い等級」を目指すことが重要です。
適正な後遺障害等級の認定を受けるには
後遺障害認定申請をするとき、適切に対応しないと本来認定されるべき等級より低くされてしまったり、後遺障害「非該当(後遺障害認定されない)」とされてしまったりするリスクが高くなります。
適切な等級を認定してもらうには、後遺障害についての知識とノウハウが必要です。
被害者が自分一人で対応すると思ったような結果にならないケースがあるので、医師から「後遺症が残りそうですね」と言われているなら一度弁護士に相談に行くようお勧めします。
バイク事故後に後遺障害認定を受ける方法
それぞれの申請方法について見ていこう。
バイク事故後、後遺障害認定を受けるときの流れには「事前認定」と「被害者請求」の2通りがあります。
事前認定と被害者請求
「事前認定」とは相手の任意保険会社に手続きを任せる方法で、「被害者請求」は被害者が自分で自賠責に後遺障害認定請求をする方法です。
事前認定で相手の保険会社に手続きを任せるとどのような対応をされるかわからないので、より確実に等級認定を受けるには被害者請求の方がお勧めです。
ただし被害者請求にはたくさんの書類が必要で手間もかかるので、弁護士に依頼した方が良いでしょう。
後遺障害の申請に必要となる書類と流れ
事前認定の場合
事前認定であれば医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼して入手し、相手の任意保険の担当者に送るだけで済みます。
審査が終了すると担当者から認定結果を通知されます。
被害者請求の場合
被害者請求の場合、以下のような書類が必要です。
- 保険金請求書
自賠責保険会社から書式を取り寄せて被害者が作成します。 - 交通事故証明書
自動車安全運転センターから取り寄せます。 - 事故発生状況報告書
自賠責保険会社から書式を取り寄せて被害者が作成します。 - 診断書、診療報酬明細書
病院から取り寄せます。 - レントゲンやMRIなどの検査資料
病院から取り寄せます。 - 後遺障害診断書
自賠責保険から書式を入手して担当医師に作成してもらいます。 - 休業損害証明書
会社(勤務先)に作成してもらいます。 - 交通費の明細書
自分で作成します。
これらを加害者の自賠責保険へ送ると審査が行われ、認定結果が通知されます。
申請から支払いまでにかかる期間
後遺障害認定の申請をしてから等級認定されるまで、だいたい2~4か月程度です。
被害者請求の場合、認定されると速やかに指定した口座へ保険金が入金されます。
事前認定の場合、示談が成立するまで保険金は支払われません。
任意保険会社が示談成立時にまとめて支払います。
早く保険金を受け取れるという意味でも、被害者請求を利用した方が被害者にとっては有利といえるでしょう。
まとめ
賠償金がこんなに変わるなんて知らなかったよ!
バイク事故で後遺症が残ったら、きちんと後遺障害認定を受けて適切な賠償金を受け取る必要があります。
お一人で対応すると不安があるなら、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみるようお勧めします。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。