被害者自身が交通事故により、どんな症状であるのか、詳しく記されているのが、診断書だよ。
治療の経過を調べるための経過診断書は、相手の保険会社側が直接医療機関に請求する事になるんだよ。 診断内容は個人情報となるから、被害者本人の同意が必要となる、そのための書類が同意書となるんだ。 今回の記事では、経過診断書の書き方を有利にする方法や、同意書の内容にについて、詳しく見ていこう。
交通事故に遭ったときには、さまざまな書類が必要となります。
中でも「診断書」は、治療費の支払いを受けたり後遺障害の認定を受けたりするときに、非常に重要です。
また、加害者の損害保険会社の担当者から「同意書」の提出を要求されることもありますが、被害者の方は、同意書を提出して良いのかどうか、迷ってしまわれることが多いです。
今回は、交通事故で重要な書類である「診断書」と「同意書」について、解説します。
目次
診断書とは
人身事故では、診断書が重要
人身事故に遭ったときには「診断書」が非常に重要です。
診断書とは、医師が担当する患者の症状について記載する文書のことです。
簡易なものから詳しいものまで、非常にさまざまなものがあります。
基本的に傷病名と患者名、患者の生年月日などの基本事項はどのような診断書にも書いてありますが、その他の記載事項は、医師に依頼する内容により、大きく異なってきます。
たとえば、簡単に傷病名と加療期間(見込み)だけが書かれていることもありますし、各種テストの結果や日常生活でできることなどを詳しく書き込む診断書もあります。
交通事故においても、診断書は非常に重要です。
加害者の保険会社は、診断書の内容によって治療費の支払いや打ち切りを決定することがありますし、自賠責保険は、診断書の内容によって、後遺障害認定をするかどうかや等級を決定することがあるからです。
診断書を作成するのは、医師
診断書が交通事故の障害保険金に大きな影響を与えることは確実ですが、これを作成するのは、「医師」です。
そこで、患者本人が、自分の有利になるように診断書を作成することはできません。
あくまで、医師が客観的に作成する文書であるからこそ、信頼性が高く、交通事故で重要な資料となるのです。
ただ、そうはいっても、被害者請求や、賠償金請求で有利になりやすい診断書が作成されるように工夫することは可能です。
その具体的な方法については、後の項目で詳しくご説明します。
交通事故で重要な、2種類の診断書
2つの診断書がどのように作成されるのか、詳しく説明するね。
一般的に診断書にはいくつもの種類がありますが、交通事故で重要となるのは、2種類です。
1つは、医療調査のための経過診断書と呼ばれるもので、もう1つは後遺障害等級認定のための後遺障害診断書と呼ばれるものです。
経過診断書とは
経過診断書とは、病院で1ヶ月に1回程度、定期的に作成される診断書です。
交通事故後、通院している間、作成され続けます。
そこで、経過診断書を見ると、患者がどのような治療経過をたどってきたのかが明らかになります。
たとえば、症状がかなり改善してきたことがわかることもありますし、反対に、なかなか良くならないことがわかるケースもあります。
また、交通事故後、患者の自覚症状に関する訴えに変遷があると、経過診断書を見ると明らかになるので、注意が必要です。
後遺障害診断書とは
後遺障害診断書とは、交通事故で被害者に後遺障害が残ったかどうかを判断するための診断書です。
後遺障害診断書は、身体の各部位の症状について、詳しく書き込むことができる書式となっています。
後遺障害診断書から明確に後遺障害があることを読み取れる場合には、後遺障害が認定されやすくなりますし、後遺障害診断書の内容において、後遺障害に該当しない内容しか書かれていなければ、基本的に後遺障害は認定されません。
後遺障害診断書の作成には医師の裁量も関係してくるので、より確実に後遺障害認定を受けたいのであれば、交通事故のことをよく知っている医師に診断書を書いてもらうことが有効です。
診断書の作成方法
このように、交通事故被害者にとって重要となる各種の診断書ですが、どのようにして作成するのでしょうか?
経過診断書の場合
経過診断書については、被害者が特に医師に依頼しなくても、医師が自賠責保険と連絡を取り、作成されます。
また、被害者に交付されることもないので、被害者が内容を確認したい場合には、病院に文書照会をしなければなりません。
つまり、経過診断書は、被害者が知らない間にどんどん作成されているということですから、どのような内容が書かれているのかチェックすることはできないのです。
経過診断書が適切に作成されるためには、被害者が日々の通院で医師に伝える内容が重要となってきます。
後遺障害診断書の場合
これに対し、後遺障害外診断書については、自動的に作成されることはありません。
被害者が書式を取り寄せて、自分で医師に用紙を渡し、作成を依頼しなければならないのです。
後遺障害診断書の書式は、保険会社に問い合わせると、送ってもらうことができます。
また、交通事故トラブルに注力している弁護士も後遺障害診断書書式を持っていることが多いので、相談している弁護士がいるなら、聞いてみると良いでしょう。
書式を手に入れたら、医師に渡して「交通事故の後遺障害診断書を書いてください」と言えば、作成してくれます。
後遺障害診断書は、記入欄が多いので、その場で作成してくれることはありません。
数日後~2週間後くらいに病院に取りに来るように言われるでしょう。
後遺障害に関する他の診断書について
通常の身体障害の場合、後遺障害診断書はすべて共通する1種類のものです。
しかし、後遺障害の部位や内容によっては、通常の書式とは異なるものが必要なケースがあります。
たとえば、歯牙の後遺障害(歯の後遺障害)の場合には、専用の後遺障害診断書書式がありますし、脊柱の後遺障害(背骨の後遺障害)の場合には、「脊髄症状判定用」の専用の用紙が必要となります。
うつ病やPTSDなどの精神症状のケースでも、別書式の診断書が必要です。
ケースに応じた診断書の書式を入手して、医師に渡し、作成を依頼しなければなりません。
これらもすべて、自賠責保険に申請すると、送ってもらうことができますが、向こうの方から「他にこのような書式が必要ですよ」と親切に言ってもらえないことも多いです。
そんなとき、交通事故トラブルに注力している弁護士によるサポートを受けていると、必要書類を漏らすことがなくなるので、安心です。
診断書の提出先、作成のタイミング、料金
費用は誰が支払うの? 自分で動かなければ、後遺障害診断書は作成してもらう事ができないから注意しよう。
診断書は、いつ、どこに提出するもので、どのくらいの料金がかかるものなのでしょうか?
これについても、診断書の種類によって異なりますので、以下では分けてご説明します。
経過診断書の場合
経過診断書は、交通事故後、定期的に作成されます。
だいたい1ヶ月に1回程度であることが多いです。
診断書が作成されるのは、症状固定するまでの間です。
治療期間が長引くと、その分作成される期間も長くなり、枚数も増えます。
提出先は、相手の自賠責保険です。
自賠責保険から病院に治療費を支払うために診断書を要求しているためです。
経過診断書については、被害者が依頼するものではないので、被害者の費用負担はありません。
ただし、後に病院に照会をして、診断書や診療報酬明細書をまとめて取得する場合などには、その際の手数料(文書料)が必要になります。
病院にもよりますが、だいたい1万円~2万円程度です。
後遺障害診断書の場合
後遺障害診断書が作成されるタイミングは、症状固定したときです。
症状固定とは、交通事故後、治療を継続することにより、それ以上症状が改善しなくなった状態です。
症状固定したかどうかは、医師が判断します。
そして、症状固定したときに、患者本人が医師に依頼することによって、後遺障害診断書が作成されます。
経過診断書とは異なり、後遺所外診断書が作成されるのは、基本的にこの一回のみです。
ただし、後遺障害認定に対する異議申立などを行うために、後日、再度別の後遺障害診断書を作成してもらう場合などには、2回以上に及ぶケースもあります。
また、後遺障害診断書は、患者が医師に作成を依頼しますから、患者が料金を負担する必要があります。
料金は、病院によってさまざまですが、だいたい5千円~1万円程度です。
効果的な診断書の作成方法
経過診断書も後遺障害診断書も、被害者が適切に賠償金を獲得するために非常に重要な書類です。
適切に作成してもらうための工夫を、以下で紹介します。
経過診断書の場合
定期的に、頻繁に通院する
経過診断書の場合、まずは、定期的にある程度の頻度を持って、通院することが重要です。
たとえば1ヶ月に5回くらいしか通院していない場合には、ほとんど治療をしていないことになってしまいます。
一貫した主張を続ける
また、交通事故後、一貫した主張を行うことも重要です。
たとえば、むちうちなどのケースにおいて、当初と治療途中、治療終了時において、それぞれ別の症状を訴えていると、最終的に残っている症状は交通事故によるものとは異なると判断されてしまう可能性があります。
完治したと誤解される発言をしない
たとえば、治療を受けているときに「もう良くなりました」「今日は痛くない」などと言わないことです。
症状が長期の及ぶ場合、たまたま調子の良いときもあります。
そういったときに、「痛くない」などと言ってしまうと、そのことが診断書に残ってしまい、後で保険会社が見たときに「このとき、既に完治していた」などを言われてしまう可能性があるからです。
なお、通院時に「積極的な治療を受けていること」も、経過診断書作成時のポイントとなります。
たとえば、単にシップをもらって帰るだけ、と言うことを繰り返していると、もはや治療の必要はないのだと思われてしまいます。
ただ、治療方法については患者だけが判断できることではないので、医師と相談しながら適切な方法を決定してもらいましょう。
経過診断書で重要なポイント
以上のように、経過診断書で注意しなければならないのは、以下のような点です。
- 定期的に頻繁に通院すること
- 矛盾したことを言わないこと
- 治ったと思われるようなことを言わないこと
後遺障害診断書の場合
次に、後遺障害診断書作成で重要なポイントを説明します。
必要な検査をすべて受けていること
後遺障害診断書では、各後遺障害を判定するときに必要な検査結果について、書く欄があります。
そこで、その前提となる検査を網羅的に受けていることが重要です。
自分がどのような後遺障害に該当するのかを正しく把握して、その症状に必要な検査を知ることが大切です。
医師に相談するのはもちろんのこと、交通事故トラブルに注力している弁護士も後遺障害の症状や検査についても知っていることがあるので、相談してみるのも良いでしょう。
また、同じMRIでも、精度の高い機器を使う場合とそうでない場合とで、結果が異なる場合があります。
そこで、なるべく精度の高い検査機器を使ってくれる医療機関にかかることが重要です。
自覚症状をしっかり伝えていること
後遺障害診断書は、医師が作成するものですから、被害者が作成に関わる部分は少ないです。
ただ、その中でも自覚症状については、被害者の訴えを反映してもらうことができます。
そこで、医師にしっかりと、自分が日頃感じている自覚症状を伝えましょう。
そのためにも、交通事故後一貫して矛盾のない訴えをしていることが必要ですし、日頃の医師とのコミュニケーションも重要となります。
同意書とは
同意書にサインしないと、かかった医療費を請求することができないから注意しよう。
交通事故で問題になりやすい書類として、同意書もあります。
交通事故後、比較的早い段階で、保険会社が被害者に「同意書」を書いてほしいと言ってくるのです。
同意書とはどのようなものでしょうか?
同意書を作成する意味
交通事故の同意書は、被害者が、「保険会社が病院に対し、自分の医療情報や症状を医療照会することに同意します」ということを記載する書類です。
本来、診断書や診療報酬明細書は個人情報に関わるものですから、保険会社が勝手に見ることはできません。
ただ、同意書を提出すると、保険会社は病院に問合せをして、被害者に関する診療報酬明細書や経過診断書を取得することができるようになります。
保険会社は、これらの書類を見て、病院に対して治療費の立替払いを行います。
同意書を提出しないと保険会社は病院に治療費を支払わないので、被害者が全額立て替える必要があります。
そこで、保険会社から同意書の提出を求められたら、基本的には同意書を提出すると良いでしょう。
同意書作成の注意点
同意書を作成するときには、注意点もあります。
まず、相手の保険会社に治療経過を見られてしまうということです。
たとえば、治療経過において、だんだんと積極的な治療が行われなくなってくると、「もう症状固定したはず」と言われて治療費を打ち切られることになります。
また、経過診断書において、患者の訴える症状に変遷があると、後の後遺障害認定の際に不利益な資料とされてしまうこともあります。
ただ、そうはいっても同意書を作成しないと言うわけにもいかないでしょうから、通院をするときには、不利な経過診断書を作成されないように、「効果的な診断書の作成方法」で紹介したようなことに注意するようにしましょう。
慰謝料の無料診断とは
さて、話がかなり変わりますが、交通事故被害者が受けられる「慰謝料の無料診断」というサービスがあります。
これは、整骨院や病院で受けられる診察や治療のサービスではありません。
交通事故の慰謝料の金額が適正であるかどうかを、専門的に判断してもらえるサービスです。
交通事故の慰謝料には適正な計算方法があります。
しかし、被害者が自分で相手の任意保険会社と示談交渉をするときには、「任意保険基準」という低額な基準が使われるので、金額が相当下げられてしまうのです。
そのことに気づかないまま示談してしまったら、被害者は大きな不利益を受けることになります。
そこで、専門家に適正な慰謝料を診断してもらうことにより、本来受け取れる慰謝料の金額を知り、適正な金額の慰謝料を受け取ることができます。
加害者側が調査会社に依頼した場合でも、適正な価格で賠償金をもらう事ができますから、安心です。
慰謝料を診断してもらうメリット
慰謝料の無料診断を受けると、慰謝料を大きく増額できる可能性があります。
たとえば、後遺障害12級の場合、相手の保険会社からは、100万円程度の慰謝料の提示しか受けられないことが普通です。
ところが、慰謝料の無料診断を受けると、290万円程度にまで増額できると教えてもらえるのです。
そうしたら、100万円という低い金額で示談することがなく、慰謝料の金額3倍程度にまで増やすことも可能となります。
慰謝料の無料診断サービスを利用する方法
慰謝料の無料診断は、法律事務所で行われています。
ただ、実施している事務所と実施していない事務所がありますし、慰謝料の無料診断という名前ではなく、「賠償金診断サービス」や「示談金クイック診断」、「賠償金無料診断」など、法律事務所によって、さまざまなネーミングを付けていることもあります。
ネットで検索すると、こういったサービスをいくつか見つけることができるので、良さそうな事務所があったら、電話やメールで問合せをしてみましょう。
通常は、事務所に行って弁護士と面談による相談を受けた上で、適正な金額を教えてもらうことができます。
相手の保険会社から示談金の提示を受けたけれども、適正な金額になっているかどうかがわからない場合などには、是非とも利用してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、交通事故で重要な診断書と同意書について、ご説明しました。
経過診断書も後遺障害診断書も、被害者に有利になるように作成してもらう工夫が必要です。
適切な対処方法がわからない場合には、交通事故トラブルに注力している弁護士を探して、相談してみましょう。
慰謝料の無料診断サービスも、是非とも一度、利用してみると良いでしょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。