慰謝料ってどのくらいもらえるのかな?
今回の記事では、原付で自動車とぶつかってしまった時に受け取れる慰謝料や、修理費の相場について、詳しく見ていこう。
原付を運転しているときに自動車と交通事故に遭ってしまったら、どのくらいの慰謝料が払われるのでしょうか?
それぞれの過失割合や請求できる原付の修理費用についても知っておきましょう。
今回は原付で自動車と交通事故に遭ったときの賠償金や過失割合について解説します。
目次
原付と自動車の事故で受け取れる慰謝料
原付乗車中に自動車と交通事故に遭った場合、どのくらいの慰謝料が払われるのでしょうか?
実は慰謝料の計算方法は、原付でも自動車でも同じです。
自動車同士の事故と原付のケースで違いはなく、被害者の受傷程度や被害結果に応じて計算されます。
慰謝料の種類
交通事故の慰謝料には以下の3種類があります。
- 入通院慰謝料
被害者がケガをしたときに支払われる慰謝料です。
入通院期間が長くなると金額が上がります。
たとえば軽いむちうちとなり3ヶ月通院したら53万円程度、骨折して1ヶ月入院、半年通院したら149万円程度が相場となります。 - 後遺障害慰謝料
被害者に後遺障害が残った場合に支払われる慰謝料です。
入通院慰謝料とは別に支払われます。
金額は後遺障害の等級によって異なり、認定等級が高い重症のケースで慰謝料額が上がります。
たとえば重症のむちうちで12級になったら290万円、複雑骨折や脳障害などで5級となれば1,400万円程度が相場となります。 - 死亡慰謝料
被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。
一家の大黒柱であれば2,800万円程度、母親や配偶者の場合に2,500万円程度、それ以外の場合に2,000~2,500万円程度が相場となります。
過失割合と慰謝料の関係
慰謝料の計算方法は自動車でも原付でも同じですが、原付の場合には「過失割合が低くなる」ため過失相殺されにくくなります。
その結果、受け取れる慰謝料が高額になりやすい特徴があります。
過失相殺とは
過失相殺とは、過失割合に応じて賠償金額が減額されることです。
被害者であっても過失が認められる場合、相手に請求できる賠償金は減額するのが公平といえるでしょう。
そこで過失割合に応じて賠償金が減額されます。
たとえば1,000万円の慰謝料が発生していても、被害者の過失割合が20%であれば慰謝料は2割減の800万円に減らされます。
このように、被害者の過失割合が上がると過失相殺によって賠償金が減額されるという基本ルールを押さえましょう。
原付の事故は自動車の過失割合が高くなる
原付と自動車の交通事故では、自動車同士の交通事故よりも自動車の過失割合が高くなります。
自動車はいわば「鉄の塊」でスピードも出しやすく、事故に遭ったときの危険が小さいからです。
反面、反面原付は車体が小さくライダーの身体がむき出しでスピードも出ません。
圧倒的に不利な立場といえるでしょう。
このような場合には強者である自動車に重い責任を負わせるのが公平です。
こういった事情から自動車と原付の交通事故では自動車側の過失割合が高くなるので、原付の過失割合は低くなります。
過失相殺率が小さくなるので、結果的に原付が請求できる慰謝料額は上がりやすくなるのです。
ただし原付が赤信号を無視した場合や一方的に追突した場合などには原付の過失割合が100%になる可能性もあるので、注意してください。
原付と自動車の交通事故における過失割合の例
条件によって異なる過失割合の一例を見てみよう。
以下で原付と自動車が交差点で交通事故に遭った場合の過失割合をご紹介します。
信号機のある交差点上の直進車同士の交通事故
原付の信号機の色 | 自動車の信号機の色 | 原付の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) |
青 | 赤 | 0 | 100 |
赤 | 青 | 100 | 0 |
黄 | 赤 | 10 | 90 |
赤 | 黄 | 70 | 30 |
赤 | 赤 | 40 | 60 |
信号機のある交差点上で直進車と右折車の事故
原付が直進、自動車が右折
原付の信号機の色 | 自動車の信号機の色 | 原付の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) |
青 | 青 | 15 | 85 |
黄 | 青信号で進入して黄信号で右折 | 60 | 40 |
黄 | 黄 | 30 | 70 |
赤 | 赤 | 40 | 60 |
赤 | 青信号で進入し赤信号で右折 | 80 | 20 |
赤 | 黄信号で進入し赤信号で右折 | 60 | 40 |
赤 | 右折の青矢印信号で右折 | 100 | 0 |
自動車が直進、原付(バイク)が右折
原付の信号機の色 | 自動車の信号機の色 | 原付の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) |
青 | 青 | 70 | 30 |
青信号で進入し黄信号で右折 | 黄 | 25 | 75 |
黄 | 黄 | 50 | 50 |
赤 | 赤 | 40 | 60 |
青信号で進入し赤信号で右折 | 赤 | 10 | 90 |
黄信号で進入し赤信号で右折 | 赤 | 20 | 80 |
右折の青矢印信号で右折 | 赤 | 0 | 100 |
なお原付が右折するときには「2段階右折」が必要となるケースがあります。
そういった場合には上記がそのままあてはまらないので注意しましょう。
また上記は基本の過失割合であり、実際には個別事情によって過失割合が加算されたり減算されたりします。
個別の状況における過失割合の基準を知りたい場合、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
原付の修理費用はどこまで請求できる?
原付が全損になってしまった時には、時価額までしか請求できないから注意しよう。
原付で自動車と衝突したら、原付の車体が大きく破損してしまうでしょう。
その場合には原付の修理費用も請求できます。
物損として請求できる費用
原付が壊れたときに「物損」として請求できる可能性があるのは、以下のような費用です。
- 修理費用
- 買い換え費用
- 買い替え諸費用
- 評価損
これらの物損についても、原付側の過失割合が高ければ過失相殺によって減額されます。
原付側の過失割合が0%の場合には、基本的に全額の補償を受けられると考えましょう。
原付が全損した場合の修理費用
原付と自動車が接触すると、原付が激しく損傷して「全損状態」となってしまうケースが少なくありません。
全損とは、原付の主要部が壊れて「物理的に修理不可能な状態」になることです。
また修理が可能であっても「修理費用が原付の価値を上回る場合」には、全損扱いとなります。
全損になった場合、修理費用として支払われるのは「原付の時価額」までとなるので注意しましょう。
修理費用が高額になっても全額払ってもらえるわけではありません。
時価を超える部分については、被害者の持ち出しとなってしまいます。
買い換え費用
原付が壊れたら、「買い換え費用」を払ってもらえる可能性もあります。
この場合にも修理費用と同様に「原付の時価額」が限度となり、高額な原付に買い替えても全額を払ってもらえるわけではありません。
原付の価値を上回る買い換え費用が支払われると、交通事故によって被害者が「得をする」結果になってしまうためです。
原付の時価を超える新車を購入する場合、差額は自己負担となるので注意しましょう。
買い替え諸費用について
原付を購入するとき、買い替えの諸費用も払ってもらえる可能性があります。
- 新車の登録費用
- 納車手数料
- 廃車の手数料
- 自動車重量税のうち、未経過で還付を受けられない部分
評価損について
原付で交通事故に遭うと、評価額が下がってしまうケースもあるでしょう。
自動車やバイクの物損事故では、評価額の減損について「評価損」として賠償してもらえ可能性があります。
ただ評価損が認められるのは、「被害車両が高級外車や高級車の新車」で評価損が大きいケースに限られます。
一般的な原付の場合には、評価損を請求するのは難しくなるでしょう。
原付で事故に遭った場合の注意点
重傷を負ってしまった場合や、過失割合に納得できない場合には、弁護士に依頼する事で、適正な過失割合の割り当て、後遺障害認定の手続きをお任せできるから、出来るだけ早く弁護士に相談しよう。
原付で自動車相手に交通事故に遭った場合には、以下のような点に注意してください。
自分で示談交渉に対応しなければならない
原付と自動車が事故を起こした場合、原付のドライバーは「1人で相手の保険会社と交渉しなければならない」可能性が高くなります。
原付は任意保険へ加入している方が少ないからです。
任意保険に加入していたら、任意保険会社の担当者が示談交渉を代行してくれるのでドライバーが自分で交渉する必要はありません。
しかし加入していなかったら誰も代行してくれないので、自分で示談を進める必要があります。
原付の任意保険加入率は約4割ともいわれています。
1人で示談交渉に対応すると大きく不利になってしまう可能性があるので注意しましょう。
重傷となるケースが多い
原付と自動車が事故に遭うと、原付のドライバーは大けがをしてしまうリスクが高くなります。
自動車は鉄の塊で高スピードを出しているのに対し、原付は車体も小さくライダーは通常の服装をしており、事故の衝撃をまともに受けてしまうためです。
複雑骨折や脳障害などとなると、重大な後遺障害が残ってしまうケースも少なくありません。
後遺障害が残ったら、相手の自賠責保険へ後遺障害等級認定の請求を行い、きちんと後遺障害認定を受けましょう。
認定を受けられたら、後遺障害慰謝料や逸失利益の支払を受けられるので大きく賠償金がアップします。
自分で後遺障害等級認定の手続きを進めるのに不安があれば、弁護士に任せましょう。
適正な過失割合を認定する
原付と自動車が交通事故に遭うと、原付側の過失割合は低くなるのが通常です。
ただ自分1人では適切な過失割合を算定するのは難しくなるでしょう。
保険会社の提示する過失割合が必ずしも適正とはいえません。
過失割合を高くされてしまったら、不当に賠償金額を下げられて本来もらえるはずの賠償金をもらえなくなってしまいます。
過失相殺されると賠償金全体に影響するので、慰謝料、治療費、休業損害、修理費用すべてが減額対象となります。
過失割合に少しでも疑問があるなら、弁護士に依頼して適正な過失割合を確認するようお勧めします。
弁護士費用特約を利用する
原付で交通事故に遭ったとき、自分1人で相手の保険会社と交渉すると極めて不利になってしまいます。
ケガの治療もしなければならない中、相手と話を進めるのは大きなストレスとなるでしょう。
そんなとき、弁護士費用特約を利用できる可能性があります。
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を出してくれるサービス。
交通事故の示談交渉や裁判などにかかる費用を保険会社が負担してくれるので、被害者は自分で費用を支払わずに弁護士に依頼できます。
自動車保険に特約をつけていれば、原付の交通事故にも適用できます。
家族が加入している自動車保険の弁護士費用特約を利用できる可能性もあります。
原付だけではなく自動車も所有している方、家族が自動車を所有している方は、ぜひ自動車保険の内容を確認してみてください。
もしも弁護士費用特約がついていたら、必ず適用して示談交渉を弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼すると慰謝料が増額される
弁護士に依頼すると、一番高額な計算方法となる弁護士基準で計算することができるから、大幅に慰謝料をアップできるんだよ。
原付の交通事故で弁護士に依頼すると、いろいろなメリットがあります。
特に「慰謝料が大きく増額される」点は無視できません。
実は交通事故の慰謝料計算方法は複数あり、被害者が示談交渉に対応するときには、保険会社が定めた基準が適用されます。
保険会社基準は法的な基準より低いので、どうしても賠償金が低くなってしまいます。
一方で、弁護士に依頼すると高額な「弁護士基準」が使われます。
すると賠償金が大幅にアップするケースが少なくありません。
原付で大けがをして後遺障害が残った場合、弁護士にいらいするだけで賠償金が5倍、10倍となる可能性も。
こういったことを考えると、原付の交通事故では弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。
当サイトには全国で交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士を特集しています。
弁護士費用特約も適用できる事務所が大半。
原付の交通事故で困ったときには、1人で悩まずにお近くの交通事故に詳しい専門家を探して問合せをしてみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。