どうしたら良いのかな?
医師は、後遺障害診断書の作成を拒否する事は出来ないのだけれど、場合によって、断られる事もあるんだ。
今回の記事では、医師から後遺障害診断書の作成を断られてしまった場合の対処法や、断る理由について、詳しくみていこう。
交通事故で後遺障害等級認定をしようとしても、医師が後遺障害診断書を書いてくれないと手続きを進められません。
後遺障害認定には後遺障害診断書が必須です。
担当医に断られても、時期を待ったり別の医師に作成を依頼したりして、後遺障害診断書を用意できる可能性があります。
この記事では、なぜ医師が後遺障害診断書を書いてくれないのか、作成を拒否されたときにどのように対処すべきかお伝えします。
事故後、むちうちや骨折などで後遺症が残った方、医師が後遺障害診断書の作成に協力してくれない方はぜひ参考にしてみてください。
目次
後遺障害診断書とは
後遺障害診断書とは、自賠責で後遺障害等級認定を受けるときに必要な診断書です。
むちうちや関節可動域の制限など、後遺障害について詳しく記載してもらいます。
自賠責に専門書式があるので、取り寄せて医師に作成を依頼すれば、通常は作成してもらえます。
自賠責は後遺障害の判定を行うとき、後遺障害診断書の内容を非常に重視します。
記載内容1つで後遺障害が認定されなくなってしまうケースも少なくありません。
後遺障害等級認定を請求するときには、必ず医師に後遺障害診断書を作成してもらって自賠責へ提出する必要があります。
後遺障害診断書なしで後遺障害認定を受けるのは不可能と考えましょう。
後遺障害診断書を作成できるのは、実際に患者を診た「医師」のみです。
被害者自身や医師資格のない人、医師であってもまったく患者を診たことのない人は作成できません。
医師が後遺障害診断書を書いてくれない7つの理由
医師が後遺障害診断書を作成してくれないよくある理由を7つあげてみたよ。
医師は正当な理由なしに診断書の作成を拒否できません(医師法19条2項)。
ただし、状況によっては後遺障害診断書を書いてくれないケースもあります。
なぜ作成を断られるのか、よくある理由を7つお伝えします。
治療が終わっていない
1つ目に「治療が終わっていない」と判断されている可能性があります。
後遺障害診断書は、治療が終了して「症状固定」しないと作成できません。
症状固定とは「それ以上治療を継続しても改善しなくなった状態」です。
症状固定すると、治療を継続しても意味がないので治療は打ち切ります。
症状固定したときに残存している症状が後遺症となり、後遺障害診断書に書くべき内容になります。
症状固定していなければ、医師としても後遺障害が残るケースかどうかわかりませんし、後遺障害の内容も確定しないので、後遺障害診断書を作成できません。
後遺症が残っていないと判断された
後遺障害診断書は、後遺症が残っていることを前提とするものです。
医師が「後遺症は残らず完治した」と判断すると、作成を断られます。
たとえばむちうちになった場合でも、MRIなどの画像に何ら異常がなく痛みやしびれなどの症状が落ち着いていれば、後遺症は残っていないと判定される可能性があります。
治療を中断した
交通事故直後は通院していたけれど途中で病院に行かなくなり、治療を中断してしまった場合には医師から後遺障害診断書の作成を断られる可能性が高くなります。
治療を放棄すると、医師にはその後どういった経過をたどっているのかがわかりませんし、後遺症があるかどうかも判定できないからです。
後遺障害等級認定を受けるため、自己判断で通院をやめずに症状固定するまで通院を継続しましょう。
転院した
事故後に転院した場合、転院先の医師によっては後遺障害診断書の作成を断られる可能性があります。
診断書を作成するには、当初からの症状の経緯を確認しなければならないためです。
特に転院後間もない医師の場合、具体的な経緯がわからないため正確に診断書を書くのが難しくなる可能性が高くなります。
健康保険を利用した
交通事故後の治療に健康保険を適用すると「健康保険を適用すると、自賠責用の書類は作成できない」といわれてしまうケースがあります。
主には「自賠責関係の手続きには健康保険を適用できない」という誤解があるためです。
ただ、実際には健康保険と自賠責の手続きは両立します。
健康保険を適用していても後遺障害診断書は書いてもらえるので、あきらめる必要はありません。
病院の方針で後遺障害診断書に対応できない
病院によっては、「病院の方針により交通事故関係の後遺障害診断書に対応していない」といわれるケースもあります。
多くは「交通事故トラブルに巻き込まれたくない」という病院側の都合によるものです。
ただし医師は正当な理由なしに診断書の作成を断れないので、本来はこういった理由では作成を拒否できません。
後遺障害診断書の書き方がわからない
医師によっては、後遺障害診断書の書き方がわからないので作成を断るケースもあります。
ただしはっきり「書き方がわからない」とは言わず「うちでは対応できない」「交通事故の案件に詳しくない」などと言われるケースが多いでしょう。
後遺障害診断書を書いてもらえないときのパターン別対処方法
だけど、治療を中断していたり、まだ症状固定となっていない場合には、しっかりと通院を続けよう。
医師が後遺障害診断書を書いてくれないときには、次のように対応してみてください。
症状固定していない場合
まだ症状固定していないなら、まずは治療を継続して症状固定を待ちましょう。
症状固定するまでは保険会社から治療費や休業損害も払ってもらえますし、入通院慰謝料も加算されていきます。
症状固定してからあらためて後遺障害診断書の作成を依頼すれば、対応してもらえるでしょう。
「後遺症が残っていない」と言われた場合
医師から「後遺症が残っていないので後遺障害診断書を書けない」と言われた場合、実際に後遺症が残っているかどうかが問題となります。
医学的に後遺症がまったく残っていないなら、どんなに主張しても後遺障害診断書を書いてもらえませんし、後遺障害認定も受けられません。
痛みやしびれの具体的な状況を医師に伝えて、それでも後遺症がないといえるのか確認してみましょう。
担当医とは別の医師にセカンドオピニオンを求める方法も考えられます。
日頃から担当医と綿密にコミュニケーションをとっていれば後遺症が残った、残らないなどの齟齬も発生しにくいものです。
後遺障害等級認定を見据えるなら、平素の通院時からしっかり医師に症状の内容を伝えて理解を得ておきましょう。
転院した場合
転院したために新しい病院の医師に後遺障害診断書の作成を断られたら、以下の2つの対処方法があります。
以前通っていた病院から資料を取り寄せる
1つ目は、以前通院していた病院からカルテ等の資料を取り寄せ、新しい病院の先生にお渡しする方法です。
事故当時からの治療経過がわかる資料があれば、新しい病院の医師も後遺障害診断書を作成しやすくなります。
まずは以前通っていた病院へ連絡して、診療記録の開示請求を行いましょう。
以前通っていた病院の医師に作成を依頼する
2つ目は、以前通っていた病院の医師に後遺障害診断書の作成を依頼する方法です。
転院の経緯にもよりますが、以前の通院先の医師が協力的であれば、後遺障害診断書を作成してもらえる可能性があります。
自分では頼みにくい場合、弁護士を通じて協力を依頼する方法もあります。
治療を中断した場合
交通事故後、治療を中断してしまっていたなら、早めに通院を再開しましょう。
あらためて通院して治療経過を保存し症状固定すれば、後遺障害診断書を作成してもらえる可能性があります。
ただし中断期間が長いと、症状と交通事故の因果関係を否定されて後遺障害認定そのものを受けにくくなります。
事故後に治療を中断しているなら、一刻も早く適正な治療を再開しましょう。
健康保険、病院の方針と言われた場合には
「健康保険を利用している」「病院の方針」などの事情は、後遺障害診断書の作成を断る正当な理由になりません。
健康保険を適用しても後遺障害診断書を作成して後遺障害認定請求できますし、病院の方針で診断書の作成を断ることもできません。
病院側に事情を伝えて後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
自分ではうまく説明できない場合、弁護士から伝えてもらうとスムーズに進む可能性があります。
書き方がわからない場合
医師によっては、後遺障害診断書の書き方がわからずにあいまいな言葉で断るケースもあります。
そんなときには、医師に後遺障害診断書の書き方をわかりやすく伝えるべきです。
ただし被害者本人では的確に説明するのが難しいでしょう。
弁護士から医師へ連絡してもらい、後遺障害診断書の書き方を説明してもらうのが得策です。
医師が後遺障害診断書を書いてくれないとき、弁護士に依頼するメリット
その他にも、適正な後遺障害等級を取得するための検査についてもアドバイスしてもえるよ。
医師が後遺障害診断書を書いてくれないなら、弁護士に相談しましょう。
対処方法を教えてくれる
医師が後遺障害診断書の作成を断る理由はさまざまです。
状況に応じて適切に対処しなければなりません。
交通事故案件の経験が豊富な弁護士に相談すれば、事案ごとに最適な対処方法を教えてもらえます。
医師とももめず、スムーズに後遺障害診断書の作成を依頼できて後遺障害認定請求の手続きも任せられるのは大きなメリットとなるでしょう。
医師に説明や説得をしてくれる
医師が「健康保険を使っていると後遺障害診断書を書けない」などと誤解している場合、弁護士から正しい対処方法を伝えてもらえます。
「病院の方針」といわれて断られたときも、「法律上、そういった理由では拒否できない」と伝えれば対応をお願いできる可能性があります。
患者が自分で病院に言っても対応してもらえない事例が多いので、弁護士から説得してもらうメリットは大きいでしょう。
必要な検査も依頼できる
後遺障害認定を受けるためには、必要十分な検査を実施しなければなりません。
検査が足りていなければ後遺障害が否定されてしまいます。
弁護士に依頼すると、ケガの内容に応じて必要な検査について、アドバイスをしてもらえます。
弁護士から医師へ、検査内容を示して実施を依頼してもらえるケースもあり、被害者としては安心感が高くなるでしょう。
交通事故後、医師が後遺障害診断書を書いてくれなければ被害者に大きな不利益が及びます。
早急に交通事故に詳しい弁護士に相談して、診断書を書いてもらう方法を検討しましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。