事故処理中に起きた事故は、誰に賠償請求できるの?
今回の記事では、事故処理中に後ろから追突されてしまった場合には、誰にどの位の賠償請求ができるのか、詳しく見ていこう。
交通事故に巻き込まれた後、後片付けなどの事故処理中に別の車に追突されたら誰にどのくらいの賠償金を請求できるのでしょうか?
事故に巻き込まれて当事者となったら、道路交通法により危険回避措置などの適切な対応をとらねばなりません。
対応を怠って二次被害に遭うと「過失割合」が高くなって請求できる賠償金額が減額されるリスクも発生します。
今回は事故を起こした後にとるべき対応や二次被害で追突された場合の賠償金について、解説します。
交通事故を起こした方、巻き込まれた方はぜひ参考にしてみてください。
目次
事故後、運転手や同乗者がとるべき対応
交通事故が発生すると、車両の運転者や同乗者は道路交通法にもとづく対応をとらねばなりません。
どのような義務があるのか、みてみましょう。
けが人の救護
現場にけが人がいたら、救護する義務が課されます。
安全な場所へ移し、応急処置を行いましょう。
必要に応じて救急車を呼ぶ必要もあります。
人身事故を起こしたにもかかわらずけが人を救護せずに走り去ってしまったら、「救護義務違反(ひき逃げ)」として極めて重い処罰をくだされるリスクが発生するので、必ず救護義務を果たしましょう。
危険回避措置(緊急措置)
次に二次被害を防ぐための危険回避措置をとらねばなりません。
まずは事故車を路肩などの脇に寄せて、ハザードランプをつけましょう。
三角表示板を置いたり発煙筒を炊いたりして後続車へ事故発生を知らせる必要もあります。
人や車が道路内にいると危険が生じるので、路肩などに退避しましょう。
警察へ連絡
警察への報告も道路交通法上の義務です。
人身事故でも物損事故でも警察へ事故発生と状況を報告しなければなりません。
交通事故に巻き込まれたら、すぐに110番通報しましょう。
加害者にも被害者にも義務がある
以上の道路交通法上の義務(救護義務、緊急措置義務、警察への報告義務)は、事故当事者(車両の運転者や同乗者)に発生するものです。
加害者だけではなく、被害者であっても車両を運転していたり同乗していたりしたら、道路交通法上の義務が適用されます。
加害者がきちんと対応しない場合、被害者の立場であっても危険回避措置や警察への報告をしましょう。
二次被害が起きてしまった場合の過失割合
交通事故後、路肩に車を寄せたりして警察の到着を待っていると、後続車に追突されて二次被害に巻き込まれるケースが少なくありません。
もしも事故処理中に追突されたら、加害者(追突車)に賠償金を請求できます。
ただし適切な方法で退避していたかどうかにより、過失割合が変わってきます。
たとえば退避できる状態だったのに退避していなかった場合、車を道路上に放置していた場合、停止表示器材を置いていなかった場合などには過失割合が高くなり、請求できる金額が減額されてしまう可能性があり、要注意です。
以下では二次被害に遭った場合の基本的な過失割合の基準をみてみましょう。
過失がないケース
自分が招いた事故ではなく、他車が起こした事故に巻き込まれたなら責任は小さくなります。
その場合、道路交通法上の義務を果たしていて追突されたら過失は認められません。
追突車の過失割合が100%となります。
一方、自分が招いた交通事故によって事故処理を行っていた場合には、追突されたとしても一定の過失割合が認められます。
また交通事故を起こした場合、基本的には緊急措置義務により安全な場所へ退避しなければなりません。
ただし事故現場の状況によっては退避が不可能な場合もあります。
そういったケースでは、退避をしていなくてもきちんと危険防止措置をとっていれば過失は認められません。
まとめると、二次被害が発生したときに過失割合が認められないのは、以下の条件を満たす場合です。
- 自車が起こした交通事故ではない(他車が起こした交通事故に巻き込まれた)
かつ、以下の2つのいずれかを満たす場合
- きちんと退避して停止表示器材なども置いて後続車へ危険を知らせていたにもかかわらず追突された
- 事故現場の状況において退避が不可能だったので退避していなかったが、停止表示器材を置いて後続車へ危険を知らせていた
停止表示器材の表示義務を怠った場合
ハザードランプをつけない、三角表示板を置かない、発煙筒をたかないなど、停止表示器材を置いて後続車に危険を知らせなかった場合には、被追突車に10~20%程度の過失割合が認められる可能性があります。
交通事故に巻き込まれたら、必ず停止表示機材を置いて二次被害を防ぐ対応をとりましょう。
退避しなかった場合、車を路上に放置した場合
事故当事者となったにもかかわらず車や人の退避を怠った場合には高い過失割合が認められます。
たとえば自分が事故を起こしておきながら車を道路上に放置して二次被害が発生した場合、追突された車にも責任があるとみなされてもやむを得ません。
被追突車にも20%程度の過失割合が認められます。
過失割合の修正要素について
上記でご紹介したのは基本の過失割合です。
現実に適用される過失割合は、事故の個別事情により増減する可能性があります。
過失割合を修正する事情を「修正要素」といいます。
追突事故における代表的な過失割合の修正要素をみてみましょう。
追突車のスピード違反
追突車が時速15キロメートル以上の速度違反をしていた場合、追突車の過失割合が10%程度、加算されます。
追突車が時速30キロメートル以上の速度違反をしていた場合、追突車の過失割合が20%程度、加算されます。
追突車の著しい過失
追突車に著しい前方不注視、スマホやカーナビを見ながらの運転、酒気帯運転などの事情があれば、著しい過失が認められて追突車に10%程度の過失割合が加算されます。
追突車の重過失
追突車に酒酔い運転や無免許運転、居眠り運転していたなどの事情があると、重過失が認められて20%程度の過失割合が加算されます。
視認不良
雨や濃霧、夜間などで事故現場が視認不良だった場合、追突車の責任が小さくなるので過失割合が10%程度、減算されます。
駐停車禁止場所
事故現場が駐停車禁止場所であるにもかかわらず被追突車が漫然と停車していた場合には、被追突車の過失割合が10%程度加算されます。
駐停車方法不適切
車両が駐停車する方法は、道路交通法において定められています。
具体的には道路の左端側にそって他の交通の妨害にならないようにしなければなりません。
それにもかかわらず道路幅の狭い場所や追い越し車線、幹線道路などの交通量の多い場所へ駐停車していると、交通事故の危険を高めてしまうので、被追突車の過失割合が10~20%程度加算される可能性があります。
事故処理中に二次被害が起こったときの過失割合は、個別事情によって異なります。
自分では判断がつきにくい場合、交通事故に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
過失割合によって異なる賠償金
だから、適正な過失割合を当てはめてもらうためにも、交通事故による示談交渉は弁護士にお任せするのがおすすめだよ。
事故に巻き込まれたときに加害者へ請求できる賠償金額は、過失割合によって大きく異なる可能性があります。
以下では二次被害で追突されたときに相手車両へどのような賠償金を請求できるのか、過失割合によってどの程度の変化が生じるのか解説します。
過失相殺とは
交通事故が発生したとき、過失割合によって賠償金額が変わるのは「過失相殺」が行われるからです。
過失相殺とは、被害者に過失がある場合に相手に請求できる賠償金を減額することです。
被害者にも過失がある以上、被害者も自己の責任をとるのが公平なので、被害者の過失割合に応じて請求できる賠償金を減額します。
たとえば被害者の過失割合が10%であれば、相手に請求できる金額は損害額の90%となります。
被害者の過失割合が20%になると、相手に請求できる金額が損害額の80%に減らされます。
過失割合が高くなればなるほど受け取れる賠償金が減ってしまうので、示談交渉の際にも被害者側の過失割合を高くされすぎないように注意しましょう。
加害者へ請求できる賠償金の種類
次に交通事故の被害に遭ったときに加害者へ請求できる賠償金の種類をご説明します。
人身損害
人身損害としては、以下のような費用や賠償金を請求できます。
- 治療関係費
- 付添監護費用
- 入院雑費
- 器具や装具の費用
- 介護費用
- 休業損害
- 慰謝料
- 逸失利益
物的損害
以下のような物損も賠償請求できます。
- 修理費
- 車の買い替え費用
- 車の買い替えにかかる諸費用
- 代車費用
- 評価損害
過失割合によってどのくらい賠償金額が変わるのか
被害者にも過失割合が認められると具体的にどのくらい賠償金額が変わるのか、具体例をみてみましょう。
【交通事故に巻き込まれてむちうちなどの後遺障害が残り、治療費や慰謝料などを含めて1,200万円の損害が発生したケース】
被害者の過失割合が0%であれば相手に1,200万円請求できます。
しかし被害者に10%の過失があると、全体で1,080万円しか請求できません。
過失割合が20%になると、保険会社から支払われる賠償金が960万円にまで減らされてしまいます。
適切な過失割合を認定してもらう方法
被害者が保険会社と示談交渉を進める際、過失割合を主導的に提示するのはたいてい保険会社です。
「本件の過失割合は○対○となります」などといわれるケースが多いでしょう。
ただし保険会社の提示する過失割合は必ずしも法的に適正とはいえません。
被害者側の過失割合が高めに算定されているケースもよくあります。
正しい過失割合をあてはめるため、法的な知識を持った弁護士に判定を依頼しましょう。
弁護士であれば、法的な観点から適正な過失割合を認定してくれます。
被害者が自分で保険会社と交渉しても取り合ってもらえない場合、弁護士に示談交渉を任せると過失割合が適正となるケースも多々あります。
交通事故後の二次被害で追突されてしまい過失割合や示談金額に納得できないなら、示談に応じてしまう前に交通事故に詳しい弁護士へ相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。