表示によって何が違うの?
今回の記事では、自転車が走行できる道路の表示の違いや、自転車道を走行中に事故を起こしてしまった場合、ルールを守っていないと過失割合にどのような影響が出るのか、詳しくみていこう。
道路上で自転車が通行する部分には
- 「自転車道」
- 「自転車専用通行帯」
- 「自転車ナビラインのある場所」
など、いくつか種類があります。
これらの違いについて正しく知っておかないと、知らず知らずのうちに道路交通法違反をしてしまうリスクが高まってしまいます。
違反行為をしていると、事故に巻き込まれた場合の過失割合も上がる可能性があります。
交通安全を守るためにも万一の事故に備えるためにも、自転車が通る道やマークの意味を知っておきましょう。
この記事では自転車道や自転車専用通行帯、自転車ナビラインなどの違いや意味内容をご説明します。
日頃から自転車や自動車、バイクなどを運転する方はぜひ参考にしてみてください。
目次
自転車道でのマークの違い
自転車が通る道路の主なものとして
- 「自転車道」
- 「自転車専用通行帯」
- 「自転車ナビマーク、ナビラインがついている道路」
があります。
自転車道や自転車専用通行帯については道路交通法で定められており、法的に認められる自転車専用道路といえます。
一方自転車ナビマークやナビラインは警察がわかりやすく表示しているだけのものであり、道路交通法に規定はありません。
自転車道とは
自転車道は、自転車が通るために縁石や柵、ガードレールなどで車が通る部分と分けられた車道の部分を言います。
道路交通法2条3の3において定義されています。
道路交通法2条3の3
自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
自転車道が設置されている場所では、自転車は自転車道を通行しなければなりません(道路交通法63条の3)。
違反すると罰則も適用されます。
道路交通法第63条の3
車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽けん引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
自転車以外の四輪車やバイクなどの車両は自転車道を通行してはなりません(道路交通法17条3項)。
自転車専用通行帯とは
自転車専用通行帯は、道路のうち青く塗りつぶされ「自転車専用」と書かれており、自転車が専用で走行する部分です。
自転車専用レーンとも呼ばれます。
自転車専用通行帯は自転車のみが走行する場所なので、車やバイクが入ると道路交通法違反になります。
違反して車やバイクが自転車専用通行帯を走行すると、罰則も適用されます。
自転車道と自転車専用通行帯の違い
自転車道と自転車専用通行帯は何が異なるのでしょうか?
もっとも大きな違いは、車道と自転車道路との境界のあり方です。
自転車道の場合には縁石や柵、ガードレールなどで車道と区切られています。
車やバイクが自転車道に入ってくることはあまりないでしょう。
一方、自転車専用通行帯の場合、こういった区切りがなく単に青色で塗りつぶされたりしているだけです。
自転車道と自転車専用通行帯を比べると、自転車専用通行帯の方が車両やバイクが侵入してくる可能性が高いと考えられます。
その意味では自転車専用通行帯より自転車道の方が、自転車にとってはより安心といえるでしょう。
自転車ナビラインとは
自転車に関するマークとしては、自転車ナビラインや自転車ナビマークがあります。
自転車ナビマークは、道路上に自転車の絵が書いてあって矢印が示してあるマークです。
自転車ナビラインは、道路上に青い矢印を連続して示しているマークです。
自転車ナビラインや自転車ナビマークは自転車の進行方向を示すもので、これらのマークがある場所で逆走してはなりません。
ただしこれらのマークは道路交通法などの法律によって規定されるものではありません。
交通安全のために警察が設置したもので道路標識などとは扱いが異なります。
たとえばバイクや車両が自転車ナビライン、自転車ナビマークのある場所に入ってきても道路交通法違反にはなりません。
自転車道、自転車専用通行帯と自転車ナビラインの見分け方
自転車専用通行帯の場合には、自転車専用と道路に記載されているんだ。
その他、自転車のマークや矢印のみで記された部分は、ナビマークとなるよ。
自転車道や自転車専用通行帯、自転車ナビラインはどのように見分ければ良いのでしょうか?
まず自転車道は、縁石や柵、ガードレールなどで区切られています。
こういった場所には車やバイクは入ってはなりませんし、自転車は自転車道を通らねばなりません。
自転車専用通行帯の場合には、道路の該当部分が青く塗りつぶされて「自転車専用」と書かれています。
こういった場所でも車やバイクが入ってはなりませんし、自転車専用通行帯のある場所では自転車は車道側にはみ出すべきではありません。
一方、ナビラインは道路が塗りつぶされているわけでもなく縁石などで区切られているわけでもなく、ただ矢印によって表示されているだけです。
ナビラインは法的な規制を示すものではないので、車やバイクが入ってもかまいません。
自転車以外の車両が自転車専用通行帯を走行できる場合
自転車専用通行帯は自転車しか通ってはなりません。
しかし以下のような場合には、例外的に自転車以外の車両(四輪車やバイク)も自転車専用レーンを通行できます。
- 道路外(駐車場・店舗等)に入る場合
- 交差点で左折したい場合
- 救急車や消防車などの緊急自動車に一時的に道を譲る場合
- 道路状況やその他の事情により、やむを得ない場合
自転車が歩道を走行できる場合
自転車は軽車両であり「車両」の一種です。
車道の左端を通行しなければならず、歩道を通ることは許されません。
ただし以下にあてはまる場合、自転車も歩道を通行できます。
- 「自転車通行可」の標識のある歩道
- 13歳未満または70歳以上の人
- 身体が不自由な人
- 安全のために歩道の通行がやむを得ない場合
ただし自転車が歩道を通れるケースだからといってどのような運転も許されるわけではありません。
車道に寄って徐行し、歩行者の妨げとならないよう注意しましょう。
歩行者を妨害してしまいそうな場合、一時停止して歩行者を優先させるべきです。
自転車専用通行帯と過失割合の関係
自転車専用通行帯を走行していて交通事故に遭った場合、事故の「過失割合」に影響を及ぼす可能性があります。
過失割合とは、事故の発生に対する当事者それぞれの責任割合です。
過失割合が高くなると「過失相殺」が行われ、相手へ請求できる賠償金が減額されてしまいます。
交通事故に遭ったときにむやみに過失相殺をされないように、自転車専用通行帯と過失割合の関係を正しく知っておきましょう。
逆走すると過失割合が高くなる
自転車が自転車専用通行帯や車道を走行する場合「左側通行」が原則です。
自転車専用通行帯を通るときには、自転車は左側に寄って進行方向に従って進む必要があります。
逆走すると高い危険を生じさせるので、自転車側の過失割合が上がります。
たとえば自転車が道路の右側を走行していて対抗してきた自動車と衝突した場合、自動車側に20%の過失割合が認められます。
自転車:自動車=20%:80%
自転車側に一方通行規制があった場合、逆走自転車と自動車の交通事故の過失割合は50%:50%になります。
自転車で逆走すると大ケガをしたにもかかわらず、過失相殺されて満足に賠償金を受け取れない可能性があります。
運転する際には逆走してしまわないようにくれぐれも注意しましょう。
はみ出し走行すると過失割合が上がる
自転車専用通行帯やナビラインがある場合、自転車はその範囲内を通行しなければなりません。
車道にはみ出さないよう、左側へ寄って走行する必要があります。
自転車専用通行帯やナビラインかららはみ出して車道を走行し、車やバイクに接触してしまうと、高い程度過失を割り当てられてしまう可能性があります。
自転車専用通行帯やナビラインは自転車道と違って縁石などで区切られていません。
知らず知らずの間にはみ出してしまわないよう、注意しましょう。
自転車は二段階右折が原則
自転車が右折する方法にも注意が必要です。
自転車が交差点で右折する際には、「2段階右折」しなければなりません。
ところが急いでいると、2段階右折を飛ばして右折車線に入ってしまう自転車があります。
2段階右折を無視する危険な行為をすると、自転車側の過失が上がってしまいます。
急いでいても、2段階右折のルールは守りましょう。
過失割合の修正要素
過失割合には、個別のケースにおける事情を加味するための修正要素があります。
以下のような場合、自転車側に高い過失割合を当てはめられる可能性があるので、該当する行動をしてしまわないように注意しましょう。
- 飲酒運転
- スマホなどを操作しながらの、「ながら運転」
- 2人乗り
- 並進(2台以上で並行して運転する)
- 夜間の無灯火運転
- 傘さし運転
自転車事故で過失割合に納得いかない場合の対処方法
自転車事故に遭ってしまった場合、通常は相手との示談交渉でお互いの過失割合を定めなければなりません。
ただし相手の保険会社の主張する過失割合が必ず正しいとは限らないので、要注意です。
そのまま受け入れると、過失相殺によって損をしてしまう可能性があります。
相手の主張する過失割合に納得できない場合や疑問がある場合には、示談に応じず弁護士へ相談しましょう。
弁護士であれば事故状況に応じた適切な過失割合を算定してくれます。
相手が強硬な場合でも、弁護士に示談交渉を任せれば相手を妥協させられる可能性が高まります。
どうしても相手が折れなければ訴訟で正しい過失割合を認定してもらうことも可能です。
自転車事故で困ったことがあったら、まずは一度、交通事故に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。