弁護士が教える交通事故示談交渉テクニック

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交通事故の休業損害の計算方法ともらえる期間

投稿日:2017年12月7日 更新日:

ウサギ
交通事故の被害者は、事故後仕事に影響があった場合、どんな損害補償を受ける事ができるの?

ミミズク
交通事故で仕事を休むことになった場合には、休業損害と呼ばれる損害金を受け取ることができるよ。

ウサギ
休業損害っていくらもらう事ができるの?

ミミズク
事故に遭った人の年収によって異なるんだ。今回の記事では、交通事故の休業損害について、詳しく説明するね。

交通事故に遭ったときには、仕事ができない期間が発生してしまうことが多いです。
その場合、加害者に対し、休業損害を請求することができます。

休業損害は、どのようなケースで発生し、どのように計算するのでしょうか?
今回は、休業損害の計算方法と、なるべく高額な休業損害を獲得する方法を、解説します。

休業損害とは

そもそも、休業損害とは?

休業損害とは、交通事故が原因で働けない期間が発生したため、収入を得られなくなってしまった分の損害です。

交通事故でけがをすると、入院や通院をして治療をしなければなりません。
自宅療養が必要になることもあるでしょう。
このようなとき、仕事ができなくなるので、本来得られるはずだった収入を得られなくなります。その分の損害が、休業損害です。

交通事故で仕事を休んだら、休んだ分の現金収入を加害者に請求できるということです。

休業損害をもらえる人

休業損害を請求できるのは、基本的に事故前に働いていた人です。
仕事をしていない人の場合、ケガをして働けなくなっても、もともと働いていない分けですから、損害は発生しません。
たとえば、サラリーマンや公務員、自営業者やパート、アルバイト、契約社員、派遣社員、フリーランスや事業所得者などは、休業損害を請求することができます。

また、主婦や主夫などの家事労働者にも、休業損害が認められます。
家事従事者は、実際にはお金をもらっていませんが、家事労働には経済的な価値があると考えられているからです。
たとえば、主婦が家事をすることができなくなったら、家政婦を雇いますが、その場合、家政婦にお金を払わなければならないことからも、明らかです。

失業者であっても、休業損害を認めてもらえるケースがあります。失業者の場合、実際に収入を得ていないので、原則的には休業損害が認められません。
ただ、事故当時にたまたま失業中であっても、それまではずっと働いていた人で働く意欲もあり、実際に就職活動をしていたり、就職が内定していたりすることもあります。そのような場合には、たとえ失業者であっても収入を得られる蓋然性が高かったと言えるので、休業損害を請求することができます

これに対し、無職無収入の方の場合には、休業損害が認められません。また、株式投資や不動産収入などの不労所得で生活している人の場合にも、やはり休業損害が認められません
これらの人の場合、ケガで動けなくなっても、収入に影響がないからです。

年金生活者の場合にも休業損害は発生しません。
ただし、金生活者がアルバイトなどの仕事をしている場合、アルバイト分についての休業損害は認められます

休業損害がもらえる期間

休業損害がもらえる期間は、いつからいつまでなのでしょうか?
まず、開始時期は交通事故に遭ったときからです。
そして、終期は「症状固定」するまでです。
症状固定とは、ケガの治療を続けても、それ以上ケガの状態が改善しなくなったときのことです。
事故後、症状固定するまでの間は、事故によって働けなくなったら休業損害が発生しますが、その後は、休業損害は発生しません。

症状固定すると、休業損害ではなく「逸失利益」が認められるようになります。
逸失利益とは、交通事故の後遺障害が残ったことによって労働能力が低下して、それまでと同じようには働けなくなったことにより、失われた将来の収入のことです。
交通事故で後遺障害が残ると、体のさまざまな箇所が不自由になり、それまでと同じようには働けなくなります。
すると、事故前より減収が発生するので、その減収分を相手に請求することができるのです。

症状固定前は休業損害、症状固定後は逸失利益、というように、覚えておきましょう。

休業損害はいつもらえるの?

症状固定までの休業損害は、いつ相手から支払ってもらうことができるのでしょうか?
その時期は、基本的に「示談が成立したとき」です。

交通事故で被害を受けると、加害者の保険会社や加害者本人と示談交渉をして、示談が成立したら示談書を作成します。
その後、示談の内容にもとづいて、まとめて賠償金の支払いを受けることになります。
休業損害が発生したときに、すぐに相手から支払ってもらうことはできません。

通常、示談交渉を開始するのは、症状固定してからですから、示談が成立するのは、休業損害が発生してから相当遅くなってしまうことも多いです。
ときには、
1年以上かかってしまうケースもあります。

休業損害の請求基準

ウサギ
休業損害の計算方法って決まっているの?

ミミズク
自賠責保険で計算するのか、弁護士基準で計算するのかによって、金額が変わってくるよ。
計算方法の違いについて見てみよう。

それでは、休業損害が発生したとき、どのようにして計算するのでしょうか?

実は、休業損害の計算方法には、複数の基準があります。
覚えておくべき基準は、自賠責基準と弁護士基準ですので、以下で説明をします。

自賠責保険による休業損害の計算方法

まずは、自賠責保険基準です。これは、自賠責保険において、保険金を計算するときに使われる基準です。
任意保険基準と呼ばれる基準もありますが、任意保険基準は、自賠責基準にプラスして、各保険会社独自の基準によって決められる事になります。


自賠責基準によると、休業損害の計算式は、以下の通りです。

  • 休業損害=15700円×休業日数

どのような職業であっても、一律で1日当たり5700円が基準となります。
15700円というと、年収208万円程度ですから、多くの人にとっては実際より低い数字になってしまうでしょう。

ただし、実際の給与額が1日5700円を超えることを証明できる場合には、実収入を基礎とすることができます。
その場合でも、
119000円が限度となります。
19000円というと、年収693万円程度ですから、それ以上高収入な人の場合、実収入分の休業損害には足りないことになります。

弁護士基準による休業損害の計算方法

2つ目の基準は、弁護士基準です。裁判基準とも呼ばれます。
弁護士基準は、弁護士が加害者の保険会社と示談交渉をするときや、裁判所が賠償金の計算をするときに利用する基準です。
弁護士基準は、法的な根拠を持った正当な基準ですから、被害者が賠償金請求するときには、基本的に弁護士基準を使うべきです。

弁護士基準による休業損害の計算始期は、以下の通りです。

  • 休業損害=1日あたりの基礎収入(実収入基準)×休業日数

弁護士基準の場合、自賠責基準のように、15700円や119000円に限定されることはありません。
実収入を証明することができれば、その分の休業損害を請求することができます。

また、主婦の場合など、実際の収入がないケースでは、多くの場合、賃金センサスの平均賃金を使って計算します。
賃金センサスとは、国が調査をした結果にもとづく賃金の統計資料です。賃金センサスを使うと、多くの場合、自賠責基準(
15700円)より金額が上がります。

そこで、交通事故被害者が、休業損害を計算するときには、弁護士基準を使って計算すべきです。

サラリーマンの休業損害に関する諸問題

ウサギ
休業損害について、もっと詳しく知りたいな!サラリーマンの場合には、休業損害の受け取りに何かポイントはあるのかな?

ミミズク
では早速、サラリーマンが休業損害を受け取る場合のチェックポイントを詳しく見てみよう。

日本には、サラリーマンや公務員などの給与所得者の方が非常に多いです。

そこで以下ではまず、サラリーマンや公務員の場合の休業損害にまつわる問題点やポイントをご紹介していきます。

仕事中の交通事故の場合には、労災を利用した方が、多くの休業損害を受け取ることが可能となりますから、その点も含めて比較する事が大切です。

休業損害の資料

給与明細書、源泉徴収票

サラリーマンや公務員、アルバイトの方など、給与所得者の方が休業損害を計算するためには、給与明細書が必要です。
多くのケースでは、事故前
3ヶ月分の給与明細書を基準として、1日あたりの基礎収入額を計算します。

たとえば、事故前3ヶ月の給料額が、40万円、42万円、41万円で、その間の日数が90日であった場合には、1日あたりの基礎収入は、

  • 40万円+42万円+41万円)÷90日=13666円程度

となります。
賞与を受けとっていた場合には、その分も考慮されます。
そこで、年収を計算するため、源泉徴収票を用いて
1日当たりの基礎収入を計算することもあります。

休業損害証明書

サラリーマンや公務員などの給与所得者が休業損害を請求するためには、休業損害証明書が必要です。
休業損害証明書とは、休業損害の額を、勤務先が証明するための書類です。
自賠責保険に定型書式があるので、それに記入する形で作成します。

内容としては、交通事故にもとづく休業日数や遅刻、早退の回数、休業期間における給与の支給状況、事故前3ヶ月における給与の支払状況などを記載してもらいます。

有給休暇の使用

給与所得者の場合、「有給休暇」を利用して通院をすることがあます。

有給休暇を使ったら、給料の減額はありませんが、その部分についても休業損害を請求することができます。
そこで、休業損害証明書には、有給休暇の利用日数も書き込まれることになります。

賞与の減額

交通事故で仕事を休むと、賞与を減額されてしまうことがあります。
その場合には、賞与の減額分についても、加害者に請求することができます。
その場合、勤務先に「賞与減額証明書」を作成してもらう必要があります。

賞与の減額基準が明確になっている会社であれば、基準を定めた就業規則も一緒に提出して、休業損害を請求することになります。

休業中に昇給・昇格した場合

休業期間中に、昇給や昇格して、給与の金額が事故時よりも増えることがあります。
その場合には、事故前の収入額ではなく、昇給後の金額を基準にして、休業損害の請求をすることが認められます。

昇給・昇格ができなくなった場合

反対に、事故によって働けなくなったために、昇給や昇格ができなくなることがありますその場合には、給与の差額を損害として、加害者に請求することができます。

この場合、昇給や昇格をする蓋然性が高かったことや、昇給後の給料額などについて、資料をもって証明する必要があります。

解雇・退職となった場合

交通事故で働けなくなると、解雇されたり退職を余儀なくされたりすることがあります。

その場合、退職後、ケガによって働くことが難しかった期間については、全期間、休業損害を請求することができます。
働けるようになった後は、実際に再就職先できたときか、転職に相当な期間のどちらかの分、休業損害を計算して請求することができます。

職業によって異なる金額

ウサギ
じゃあ、自営業の場合にはどうなるの?赤字経営だと、休業損害はもらえないの?

ミミズク
赤字経営でも、休業損害は受け取り可能だよ。自営業だけではなく、主婦の場合の休業損害や、会社役員である場合についても、詳しく見てみよう。

次に、いろいろな職業ごとの休業損害の計算方法をご紹介していきます。

自営業の場合

基本的な休業損害計算方法

まずは、自営業のケースの計算方法を、確認しましょう。
自営業の場合、基礎収入が問題となることが多いです。
自営業者の基礎収入を計算するとき、基本的には、事故の前年度の確定申告書の記載内容を基準とします。
売上げ額から経費を引いた金額を基準としますが、固定経費については、収入に足すことができます。固定経費とは、支払い保険料や家賃地代、減価償却費などです。

自営業者は、休業している間も、必ず固定経費分は支払わなければなりません。そこで、支払経費のうちでも、固定経費だけは、休業損害の基礎にすることが認められているのです。

  • 自営業者の基礎収入=売上げ-支払経費+固定経費

赤字の場合

自営業者の場合、確定申告書の内容が赤字になっていることがあります。この場合、休業損害は認められなくなるのでしょうか?
実は、そういったことにはなりません。
たとえ、赤字になっていても、実際に働いて生活を維持しているわけですから、収入がマイナスや0というわけにはならないはずです。

この場合、いくつかの考え方があります。
1つは、固定経費を基準にする方法です。
赤字であっても、固定経費分は必ず支払をしなければならないので、最低限、その分の収入はあるはずだ、という考え方です。

もう1つは、賃金センサスの平均賃金を使う考え方です。
この場合、業種別や年齢別の平均給与額を使い、それを何割か減額した数字を基礎収入とすることが多いです。

専業主婦の場合

次に、専業主婦の場合の休業損害の計算方法を、ご紹介します。
専業主婦の場合、実際の収入がないので、賃金センサスの平均賃金を使って計算します。

利用するのは「全年齢の女性の平均賃金」です。女性の年齢平均賃金によると、1日あたりの基礎収入は、だいたい1万円程度となります。

兼業主婦の場合

パートなどに出ている兼業主婦の場合には、パート代などの実収入を基準にすると、全年齢の女性の平均賃金より低いことが多いので、専業主婦の場合と比べて不公平になります。

そこで、実際の収入と全年齢の女性の均額を比較して、多い方の金額を基礎収入として計算します。

主夫の場合

男性が家事をしている場合の主夫の場合の基礎収入の計算方法も、ご紹介します。
この場合、男性ですから、全年齢の男性の平均賃金を使って計算するとも思えます。
しかし、男性の平均賃金は女性のものより高額ですから、男性の平均賃金を使うと、主夫の基礎収入が主婦の基礎収入より高額となり、不公平です。
そこで、主夫の場合にも、主婦と同様に、全年齢の女性の平均賃金を使って計算します。

主夫が交通事故で休業損害を計算するとき、「女性の平均賃金」を使われていても間違いではないので、覚えておきましょう。

役員報酬として労働していない場合

次に、会社経営者や役員の休業損害について、ご説明します。
会社経営者や取締役などの役員は、基本的に「労働者」ではありません。会社経営をすることにより、利益配当としての報酬を得ているのです。
そこで、交通事故によって「労働」ができなくなっても、収入に影響を受けないとも考えられます。

しかし、実際には経営者や役員であっても、自ら働くことによって収入を得ていることが多いです。
そこで、これらの人の休業損害を計算するときには、収入を、以下の
2つの部分に分けます。

  • 労務提供部分
  • 利益配当部分

つまり、働いて得ている収入の部分と、利益配当部分に分けて、労務提供部分に該当する部分のみを基礎収入として、休業損害を計算するのです。
具体的に、何割が労務対価部分として基礎収入に入るのかは、ケースバイケースで、判断します。

たとえば、1人会社でほとんどの労務を経営者が行っている場合や、経営者の個人的な能力に頼っている部分が多い企業などの場合、労務提供部分が大きくなります。
ときには、役員報酬の全額が、労務提供部分として基礎収入となるケースもあります。

休業損害が減額されてしまう場合とは

ウサギ
休業損害が減額となってしまう事もあるの?

ミミズク
収入を証明することが出来なければ、休業損害の額は少なくなってしまうんだよ。

休業損害の請求をしようとしても、さまざまな理由により、減額されてしまうケースがあります。

減収の証明ができないケース

1つ目は、減収の証明ができないケースです。
たとえば、自営業者が確定申告をしていなかっケース、自営業者が過少申告をしていたケースなどでは、実際の収入を証明することが難しくなるので、休業損害を減額されやすいです。

休業日数の証明ができないケース

もう1つが休業日数の証明ができないケースです。
たとえば、自営業者や主婦の場合、サラリーマンとは違って休業日数を誰かが証明してくれるわけではないので、休業日数を明らかにしにくいです。

入院した日数が休業日数に含まれることは問題ありませんが、通院日数については、「1日休まなければならなかったとは言えない」と言われることもありますし、自宅療養期間については「そもそも療養不要で働ける状態だった」と言われることもあります。

休業日数を証明するためには、医師に依頼して、就労不能期間についての診断書を作成してもらう必要があります。

まとめ

ウサギ
休業損害って細かく決められているんだね。休業損害の計算をする場合には弁護士に依頼する方が安心だね!

ミミズク
任意保険会社は、少しでも休業損害の支払額を少なくしようと交渉してくるから、弁護士に依頼した方が、正当な慰謝料を受け取ることができると言えるね!

以上のように、交通事故で働けない期間が発生したら、基本的に休業損害を請求することができます。
自分で相手の保険会社と示談交渉をしても、不当に減額されることがよくあります。

正当な金額の休業損害の支払いを受けるためには、交通事故に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

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福谷陽子

福谷陽子

京都大学在学中に司法試験に合格し、多重債務(債務整理)、離婚問題や交通事故、相続などの案件を担当し、自身で弁護士事務所を運営。その後体調不良により弁護士事務所を一時閉鎖し、現在は10年間の弁護士経験を元に執筆に専念。

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