耳鳴りが残ってしまった場合、慰謝料をもらう事はできるの?
今回の記事では、交通事故後に耳鳴りが残ってしまった場合にはどんな慰謝料をもらう事ができるのか、詳しく見ていこう。
交通事故後「耳鳴りが続いて治らない」お悩みを持つ方が少なくありません。
耳鳴りがすると、仕事や日常生活にも不便が発生するため、「後遺障害に該当しないだろうか?」と疑問を抱きますよね。
耳鳴りでも後遺障害認定される可能性があります。
ただし証明が難しくなるケースも多いので、正しい方法で慎重に対応していきましょう。
今回は交通事故後に耳鳴りの症状が残った場合の後遺障害や慰謝料について、解説していきます。
目次
交通事故後の耳鳴りの原因とは
中には事故のショックにより、精神的ストレスが強くなり、耳鳴りが残ってしまう事もあるんだ。
交通事故で耳鳴りが発生する原因は、いくつか考えられます。
バレ・リュー症候群
バレ・リュー症候群は、一般的に「むちうち」といわれる症状の1種です。
むちうちというと首の骨である頸椎が損傷を受けて発生する症状(頸椎捻挫)をイメージしますが、むちうちの中でも「自律神経」が狂わされてしまうケースを「バレ・リュー症候群」といいます。
バレ・リュー症候群になって自律神経に異常をきたすと、全身のバランスが崩れてしまうので頭痛や耳鳴り、めまいなどのさまざまな症状が発生します。
外傷性の鼓膜穿孔
交通事故の影響で、鼓膜に穴が空いてしまうケースがあります。
このように外傷によって鼓膜に穴が空くことを「外傷性鼓膜穿孔」といいます。
痛みや耳鳴りの症状が断続的に発生する可能性があります。
精神的な要因
交通事故による強いストレスなど精神的な要因により、耳鳴りが止まらなくなる方もおられます。
交通事故後、耳鳴りが発生した場合には早めに病院に行って診察を受けましょう。
診療科は原因によって異なります。
バレ・リュー症候群の場合には「ペインクリニック」での治療が必要ですし、鼓膜穿孔の場合には耳鼻科、精神症状の場合には心療内科や精神科となります。
まずは心当たりのクリニックを受診して、症状の原因を突き止めるところから始めましょう。
交通事故後の耳鳴りで受け取れる慰謝料とは
交通事故後、耳鳴りが止まらなくなった場合には加害者に対し以下のような慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料
交通事故でけがをすると、被害者は強い精神的苦痛を受けるので加害者へ慰謝料請求できます。
受傷にもとづく慰謝料を「入通院慰謝料」といいます。
入通院慰謝料は後遺障害認定されなくても請求できます。
また入通院の期間が長くなると金額が高くなり、数十万円~200万円程度になるケースが多いでしょう。
後遺障害慰謝料
耳鳴りの症状が続く場合、後遺障害認定される可能性があります。
交通事故後で後遺障害が認定されると、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
支払われる慰謝料の金額は、認定された後遺障害の「等級」によって異なります。
交通事故の後遺障害には1~14級までの等級があり、1級が最も重く14級がもっとも軽い等級です。
後遺障害慰謝料は、認定された等級が高くなるほど高額になります。
交通事故による耳鳴りの後遺障害等級は12級、14級
交通事故によって耳鳴りの症状が残った場合、認定される可能性がある後遺障害の等級は「12級」または「14級」です。
検査によって医学的に耳鳴りの症状を証明できる場合には12級となり、証明はできないけれども症状のあることを合理的に説明できる場合には14級が認定される可能性があります。
耳鳴りの後遺障害慰謝料の金額
12級になった場合の後遺障害慰謝料は290万円程度、14級が認定された場合の後遺障害慰謝料は110万円程度となります(弁護士が適用する法的基準の場合)。
耳鳴りの検査方法
主な耳鳴りの検査は
- ピッチ・マッチ検査
- ラウドネス・バランス検査
というものです。
ピッチ・マッチ検査では音の高さをはかり、ラウドネス・バランス検査では音の大きさを測ります。
耳鳴りで後遺障害認定を受けたい場合にはこういった聴力検査が必須となるので、医師に相談しながら実施してもらいましょう。
交通事故後の耳鳴りは後遺障害が認められにくい?
交通事故の直後から耳鳴りが発生していても、検査をして異常がない事も多いから、耳鳴りを立証しにくいんだよ。
中には、事故から数週間経過してから耳鳴りに気が付くこともあるから、因果関係を証明するのが難しいと言われているよ。
交通事故後、耳鳴りが止まらなくなったとしても必ず後遺障害認定されるとは限りません。
耳鳴りは以下のような理由により、後遺障害「非該当」とされるケースも多いのです。
原因がさまざまで被害者が適切な診療科を受診できない
交通事故の耳鳴りにはさまざまな原因があります。
バレ・リュー症候群、鼓膜穿孔、精神症状など、それぞれかかるべき診療科も治療方法も全く異なります。
被害者がどこの科に行けばよいのかわからず我慢して放置してしまったり、不適切な診療科に行って「異常なし」と言われてあきらめてしまったりするケースが少なくありません。
適切な診療科で適切な検査を受ければ後遺障害認定されるべきケースでも、被害者が気づかずに我慢するので見過ごされます。
適切な検査を受診できない
耳鳴りは、症状の立証が比較的困難です。
主に行うべき検査はピッチ・マッチ検査やラウドネス・バランス検査ですが、それだけでは不十分な場合「オージオメーター検査」「マスキング検査」「純音力検査」などを実施すべきケースもあります。
ところが被害者本人にはこういった後遺障害の立証に関する知識はないのが通常ですし、医師も詳しいとは限りません。
適切な検査が行われないまま、立証不足で後遺障害が否定されるケースがあります。
事故との因果関係を証明できない
耳鳴りの症状があっても交通事故との因果関係を証明できないケースが多々あります。
たとえば交通事故後、「何となく耳鳴りがする…」と思いながらも被害者が病院に行かず日数が経過してしまったとします。
2週間後、はじめて病院に行って医師に「耳鳴りがする」と訴えても、「交通事故とは無関係な原因で生じたものだろう」といわれてしまうでしょう。
また「年齢のせいで生じている」「気のせい」などと受け止められてしまうケースもあります。
交通事故後、耳なりで後遺障害認定を受けたいのであれば事故直後からきっちり病院にかかり、医師に「耳鳴りの自覚症状がある」ことをしっかり訴える必要があります。
交通事故後の耳鳴りで適切な慰謝料を受け取るには
その他にも、弁護士に相談しながら進めることで後遺障害等級の認定を受けやすくなるし、保険会社との示談もスムーズに進めることができるからお勧めだよ!
交通事故後、耳鳴りが発生したときに充分な慰謝料を受け取るには、以下のような対応がポイントになります。
事故後、すぐに病院に行く
交通事故で首の骨や頭部などに衝撃を受けたら、すぐに病院に行きましょう。
けがをしていないと思っても、鼓膜に穴が空いている可能性がありますし頸椎が損傷を受けている可能性もあります。
無症状ならとりあえず整形外科に行っても良いのですが、耳鳴りの症状があるなら「ペイン・クリニック」を探して受診してみて下さい。
事故後、耳鳴りを感じたらすぐに病院に行く
交通事故時には何の症状もなかったので病院に行かなかったり、事故直後には「異常なし」と診断されたりしても、事故後に耳鳴りの自覚症状を感じたらその時点ですぐに病院に行きましょう。
まずはペイン・クリニックを受診して「事故後、耳鳴りが始まりました。バレ・リュー症候群かもしれないので検査してみて下さい」と医師に相談してみて下さい。
違うのであれば耳鼻科や心療内科を受診して、鼓膜穿孔や心因的な要因がないか、調べてもらいましょう。
まじめに最後まで通院する
通院を開始した後の対応も重要です。
程度にもよりますが、耳鳴りは「我慢できるレベル」であるケースも多いので、被害者は病院に通うのを途中でやめてしまうことがあります。
たとえば仕事が忙しい方などは、耳鳴りのために会社を休んで病院に行くのが難しいかもしれません。
自営業の方も、お店や営業を休んで通院すると売上げが下がるので休めないと考えるでしょう。
しかし通院回数があまりに少ないと「本当は耳鳴りなどないのだろう」「完治しているのだろう」と思われてしまいます。
耳鳴りの症状が続いている限り、通院回数を減らさないようにすべきです。
また「いつまで通院するか」も重要です。
交通事故後の治療は「症状固定時まで」とするのが原則です。
症状固定とは「それ以上治療をしても改善しなくなった状態」です。
医師が症状固定したと判断するまで、根気強く通院を続けましょう。
症状固定前に保険会社から治療費を打ち切られたら、健康保険を適用して通院を継続するようお勧めします。
医師に症状をわかりやすく伝える
耳鳴りで後遺障害認定を受けるには、医師に症状をわかりやすく伝えることが大切です。
症状の内容により、治療方法や検査方法が変わってくる可能性もあります。
どういった状況でどのような音が聞こえるのかなど、正確に伝えましょう。
また、耳鳴りは常時続くわけではない方も多数です。
たまたま病院に行ったときに耳鳴りがしないからといって「治った」などと言ってはいけません。
また自宅に戻ると耳鳴りがする可能性が高いからです。
一時的な症状ではなく、数日、1週間などの長期的なスパンでどういった症状が発生しているのか、伝えることが大切です。
できる限りの検査をする
耳鳴りで後遺障害認定を受けるには、検査による立証が不可欠です。
耳鳴りの証明に必要な検査はピッチ・マッチ検査やラウドネス・バランス検査などさまざまです。
状況に応じて適切な検査を受ける必要があるので、専門知識を持った医師に相談し、対応してもらう必要があります。
弁護士に相談する
交通事故後の対応は、弁護士に依頼するとさまざまなメリットを得られます。
特に後遺障害が残るケースでは、専門知識を持った弁護士によるサポートを得る意義が大きくなります。
たとえば弁護士には以下のような対応をお願いできます。
- 耳鳴りが続いているときにどういった医療機関を受診すべきかアドバイスを受けられる
- 保険会社の対応に納得できないときの対処方法を教えてもらえる
- 医師とどのようにコミュニケーションをとれば良いかアドバイスをもらえる
- 後遺障害認定に必要な資料の集め方を教えてもらえる
- 医師とコンタクトをとり、後遺障害認定に必要な資料を集めてもらえる
- 後遺障害認定の手続きを代行してもらえる
弁護士に依頼すると、自分で後遺障害認定の手続きに対応するより等級認定を受けやすくなります。
また示談交渉の際にも、弁護士が対応すると「弁護士基準(法的に適正な基準)」が適用されるので、被害者が自分で示談交渉するよりも賠償金額が上がります。
自分で示談交渉をしていた被害者が弁護士に対応を依頼すると、賠償金額が3倍や5倍以上になるケースも少なくありません。
弁護士へ相談すべきタイミングと相談方法
早い段階から相談しておくことで、様々な部分でサポートしてもらう事が出来るよ。
交通事故後、弁護士に相談するなら早ければ早いほど有利になりやすいものです。
自己判断で対応して時間が経過してしまったら、不利な証拠が積み重なってしまったり必要な資料を集められなくなったりする可能性が高くなってしまいます。
交通事故で相談・依頼するならできるだけ「交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士」を選びましょう。
そして「被害者目線で親身に対応してくれる弁護士」、「明朗会計で費用がリーズナブルな弁護士」が良い弁護士と言えます。
弁護士というと敷居が高く感じますが、最近の弁護士は親身になって対応してくれる方も多数おられます。
各弁護士事務所のサイトをのぞいてみて、「お問い合わせフォーム」などを使って気に入った弁護士に連絡を入れてみて下さい。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。