通常の事故とは過失割合って変わるのかな?
だけど、状況によっては、追突された方にも過失がつく事があるよ。
今回の記事では、大雨の時に追突事故を起こしてしまった場合の過失割合について、詳しく見ていこう。
台風や大雨が降っている中で追突事故に遭った場合、過失割合はどのくらいになるのでしょうか?
悪天候だからといって過失割合に対する直接の影響は小さいですが、一定の状況であれば追突事故の過失割合が修正される可能性はあります。
今回は天気、気象条件が悪いときに過失割合にどのような影響があるのか、解説します。
悪天候の中で運転していて事故に遭われた方はぜひ参考にしてみてください。
目次
天候は過失割合に影響するのか
そもそも天候は過失割合に影響する可能性があるのか、みてみましょう。
追突事故の過失割合は100:0が原則
追突事故の過失割合は、基本的に追突した車が100%、追突された車が0%となります。
追突した車が適切な車間距離をとっていなかったために事故が発生したと考えられるためです。
ただし過失割合の「修正要素」が適用される場合、追突された車両にも一定の過失割合が認められます。
修正要素とは、基本の過失割合が修正されてどちらかの過失割合を加算したり減算したりするための事情です。
天候は過失割合に影響しないのが原則
天気の良し悪しは過失割合の修正要素となり、影響するのでしょうか?
結論的に、天気が良いか悪いかにより、基本的には過失割合に影響しないと考えられます。
過失割合とは、交通事故による損害に対する当事者それぞれの責任割合をいいます。
つまり事故発生に責任の重い方の過失割合が高くなるのが基本の考え方です。
一方で、天気が良いか悪いかについては、事故当事者のどちらにも責任のない事項といえるでしょう。
天気が悪かったからといって、どちらか一方の過失割合が直接上がったり下がったりするわけではないのです。
大雨や暴風で悪天候だったとしても、それによって直接過失割合が修正されるケースは少数と考えましょう。
注意義務を怠っていたら過失割合が修正される
ただし悪天候下においては、当事者は通常以上に注意して運転すべきとも考えられます。
つまり一般的な事案よりも高い注意義務を課されるケースがあるのです。
よって悪天候で事故を起こした場合、注意義務を怠っていたとみなされて過失割合が高くなる可能性はあります。
加害者だけではなく被害者側の過失割合が高くなるケースもあり、どちらの過失割合が高くなるかはケースバイケースです。
大雨で過失が修正されるケース
大雨などの悪天候下において追突事故などの交通事故が起こった場合、以下のような状況であれば過失割合が修正される可能性があります。
大雨による被害が発生しているのにあえて運転した
すでに大雨が降っており事故の危険性が高まっている場合、あえて車を運転すべき状況ではないと考えられます。
たとえば道路が冠水していたら、車を運転すると危険を発生させてしまうでしょう。
それにもかかわらず悪天候で運転をして案の定途中で止まってしまい、後続車から追突された場合などには前方車両にも過失割合があるといえます。
過失割合は100:0にならず、被追突車にも一定の過失割合が認められる可能性のある状況です。
前方車両が急ブレーキを踏んだ
車は、危険を避けるためにやむを得ない場合をのぞいて急にブレーキを踏んでなりません。
前方車両が急ブレーキを踏むと、追突の危険を生じさせるためです。
それにもかかわらず、悪天候下で前方車両が急ブレーキを踏むと追突事故の危険性が大きく高まるでしょう。
その場合、前方車両の過失割合が30%程度加算される可能性があります。
前方車両と後方車両の過失割合は70:30程度となります。
前方車両の不適切なハンドブレーキ操作
前方車両が急ブレーキをふまなくても、それに至らない程度の不適切なハンドルブレーキ操作をするケースがあります。
前方車両が不適切な行動をとると、後続車両が困惑して事故を起こす危険性が高くなってしまうでしょう。
そこで前方車両が不適切なハンドルブレーキ操作をした場合にも、過失割合が修正されます。
被追突車にも20%程度の過失割合が認められ、互いの過失割合は80:20程度とされるケースが多数です。
視認不良
大雨が降ると、周辺環境について視認不良な状況になるケースが多々あります。
周囲が見えにくくなると、後続車両にしてみれば前方車両を認識しにくくなるでしょう。
そこで前方車両にも一定の過失割合が認められる可能性があります。
特に駐停車が禁止あるいは制限されている場所で前方車両が停車していた場合、前方車両の過失割合が高くなると考えられます。
スピード違反
道路を運転する際には、速度制限を守らねばなりません。
制限を超えて高速で運転すると追突を始めとした高い危険を生じさせてしまいます。
特に大雨でスリップしやすい状況下において高速で運転すると、非常に危険性が高くなるといえます。
追突事故が生じたとき、前方車両が高速で運転してスリップした場合などには前方車両にも一定の過失割合が認められ、出していたスピードに応じて10~20%程度の過失割合が加算されるでしょう。
高速道路上で停車していた
一般的に、停車している車へ後方から追突した場合、追突車の過失割合が100%となります。
ただし高速道路上では追突事故の過失割合が修正されます。
高速道路では一般道路と異なり、どちらも一定以上の速度で走行しなければならない制限がかかるためです。
高速道路上で駐停車中の前方車両へ追突した場合の過失割合は、追突車が60%、非追突車が40%となります。
特に大雨であるにもかかわらず駐停車が禁止されたり制限されたりしている場所で勝手に停車していたら、後方車両にとっては事故を避け難くなるでしょう。
その場合、前方車両には40%を超える過失割合が適用される可能性もあります。
以上のように、大雨などの悪天候下における交通事故の過失割合は、具体的な状況によって修正される可能性があります。
事故に遭ったときに保険会社から過失割合を提示されて妥当かどうかわからない場合には、交通事故の専門家である弁護士に相談してみてください。
台風や大雨などの悪天候下で起こりやすい事故
悪天候の時には、極力運転は控えるべきだね。
実際に大雨や暴風などの悪天候下では、どういった事故が起こりやすいのでしょうか?
スリップ事故
大雨が降ると、スリップ事故が非常に発生しやすくなります。
道路が滑りやすくなって前方車両が滑ってしまうのです。
特にスピードを出しているとスリップ事故が起こりやすくなるので、大雨の中どうしても運転しなければならない場合には十分注意しなければなりません。
なおスリップ自体は過失割合の修正要素になっていないため、前方車両がスリップして後方車両が追突しても、追突した後方車両の過失割合が100%となるのが基本です。
いずれにせよ雨の中運転する際には、通常のケース以上に十分な車間距離を開けなければなりません。
暴風による接触事故
台風が訪れると暴風も発生しやすくなります。
暴風に煽られるとハンドルをとられて思わぬ方向へ車が動いてしまう可能性があるでしょう。
車が壁やガードレールにぶつかったり、ときには歩行者や自転車をはねてしまったりするケースもあります。
前方車両が予想外の動きをしたために後方車両が追突してしまう事故も発生します。
ただ暴風で前方車両のハンドルをとられたとしても、必ずしも過失割合は修正されません。
基本的には後方車両の過失割合が100%と考えるべきです。
一方、前方車両のハンドブレーキ操作に著しく不適切な行為があった場合や急ブレーキを踏んだ場合などには過失割合が加算される可能性があります。
適切な過失割合の調べ方
その他にも、弁護士に依頼するという方法もあるね。
交通事故の過失割合はケースバイケースです。
適切な過失割合はどのようにして調べれば良いのでしょうか?
基本の過失割合が基本的な修正要素については「判例タイムズ」という本に掲載されています。
過失割合に関する判例タイムズの正式名称は「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」といいます。
法律書の一種ですが、弁護士などの専門家以外の一般の方でも購入可能です。
通信販売で売られているので、関心のある方は1冊購入して持っているとよいでしょう。
ただし判例タイムズには代表的なケースが網羅的に掲載されているだけで、解説などは素人の方にはわかりやすくありません。
大雨が降った場合の修正の考え方などについて詳しく知ろうとしても、わからない可能性があります。
弁護士に相談する
交通事故の適切な過失割合を知りたい場合には、弁護士などの専門家へ相談するのが最適です。
弁護士であれば、事故の状況を細かく分析して事案に応じた過失割合を算定してくれるでしょう。
自分で判例タイムズを読むより正確に過失割合についての理解を得られます。
大雨などの特殊状況において事故に遭った場合には、一度交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみてください。
保険会社から過失割合の提示を受けた場合の対処方法
保険会社の主張する通りに示談を進めてしまう前に、無料相談などを利用して、まずは弁護士に相談してみよう。
交通事故後、保険会社と示談交渉を進めていると、過失割合の提示があるものです。
このとき、保険会社の主張する割合は必ずしも適正とは限りません。
保険会社側としては、被害者側に大きな過失割合を割り当ててくるケースも多いためです。
適切な過失割合を知らないでそのまま受諾してしまうと、損をしてしまう可能性があります。
保険会社から過失割合を提示されたときには、示談してしまう前に弁護士に相談してみるようおすすめします。
こちら側の過失割合が不当に高くなっていたら、適正な基準を示して修正してもらいましょう。
自分で交渉しても修正に応じてもらえない場合にも、弁護士に示談交渉を任せるのが得策です。
過失割合が10%変わると賠償金額が1割変わって影響が大きいので、特に損害額が大きな場合には妥協せずにしっかり交渉しましょう。
大雨の際には車の運転をしないのが得策ですが、どうしても運転して事故に巻き込まれてしまったらきちんと賠償を受けるべきです。
過失割合について疑問や不満がある場合、示談してしまう前に一度、交通事故に詳しい弁護士へ相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。