後遺障害4級に認定されると慰謝料はもらえるのかな?
後遺障害4級になると、かなり高額な慰謝料を受け取ることができるんだ。
今回の記事では、後遺障害4級に該当する場合の慰謝料の相場や、増額方法について、詳しく見ていこう。
交通事故で重度な後遺障害が残った場合、症状によっては「後遺障害4級」と認定される可能性があります。
適正な金額の賠償金を受け取るため、後遺障害4級になるのはどういったケースなのか、4級ではどのくらいの慰謝料が支払われるのか、詳しく知っておきましょう。
以下では賠償金を増額する方法も含めて、後遺障害4級について押さえておくべき知識を専門家が解説します。
目次
後遺障害4級と認定される基準とは
交通事故の後遺障害は、1級~14級の14段階に分類されます。
後遺障害4級は上から4番目に重い障害なので、極めて重症のケースといえるでしょう。
後遺障害4級に該当するのは、以下の7種類の症状です。
4級と認定される主な症状
- 1号 両眼の視力が0.06以下となったもの
両眼の視力が0.06以下になったら4級が認定されます。
このときの視力は「めがねやコンタクトによって矯正した後の視力」を基準とします。
矯正可能な場合には、後遺障害認定されません。
また失明した場合には等級が上がります。 - 2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
咀嚼機能とは、ものを噛んで飲み込む機能です。
おかゆや柔らかくした肉などしか食べられなくなったら「著しい障害」となります。
言語機能とは発音する機能です。
人の発する4種類の発音方法のうち2種類の発音ができなくなったら「著しい障害」となります。
咀嚼と言語の両方について「著しい障害」が残ったら4級が認定されます。 - 3号 両耳の聴力を全く失ったもの
両耳の聴力が完全に失われたら後遺障害4級が認定されます。
聴力は純音聴力検査と明瞭度検査によって判定します。 - 4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
片腕について、肘関節から肩関節までの部分で切断してしまった場合に4級が認定されます。
利き腕かどうかは関係ありません。
なお両腕が切断された場合には等級が上がります。 - 5号 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
片脚について、膝関節から股関節までの部分で切断してしまった場合に4級が認定されます。
利き足かどうかは関係ありません。
両足が切断された場合には等級が上がります。 - 6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
両手のすべての手指の機能が失われたら、4級が認定されます。
具体的には神経の障害によって手指を全く動かせなくなった場合や麻痺した場合などです。 - 7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
リスフラン関節とは、足の「甲」の部分にある関節です。
両足について、リスフラン関節より上の部分で足が失われたら後遺障害4級が認定されます。
以上のように、後遺障害4級に認定されるのは非常に重篤な症状といえます。
まったく歩けなくなったり手が使い物にならなくなったりして、日常生活にも多大な影響が発生するでしょう。
後遺障害4級と認定される事で受け取れる賠償金
受け取れる慰謝料の種類や逸失利益の計算方法について、チェックしてみよう。
後遺障害4級の症状はいずれも重大です。
必ず適切に後遺障害認定を受けて、なるべく高額な補償を受け取りましょう。
以下でどういった補償を受けられるのか、説明します。
慰謝料
交通事故で後遺障害が残った場合「慰謝料」を請求できます。
慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛に対する賠償金です。
交通事故に遭うと被害者は痛みや不安など大きな精神的苦痛を受けるので、相手に慰謝料を請求できます。
慰謝料には以下の2種類に分類されます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故でけがをしたときに発生する慰謝料で、後遺障害が残らなくても請求可能です。
治療日数に応じて計算されるので、治療日数が長くなればなるほど高額な金額が算定されます。
また通院期間より入院期間の方が高額化します。
後遺障害4級の場合、入院して手術を受けるケースも多いですし、通院リハビリ期間を合わせると治療期間は長期化するでしょう。
高額な入通院慰謝料を請求できる可能性が高くなります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺障害が残ったときに請求できる慰謝料です。
自賠責保険で「後遺障害等級認定」を受けた場合に支払いを受けられます。
後遺障害慰謝料の金額は、自賠責で認定された「等級」によって異なり、等級が高いと重症になる分、増額されます。
後遺障害4級の場合の後遺障害慰謝料相場は1,670万円です。
逸失利益
交通事故で後遺障害が残ると、逸失利益も請求できるケースがよくあります。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって得られなくなった将来の収入をいいます。
後遺障害が残ると、手足を自由に使えなくなったり目や耳が不自由になったりして、働くのが難しくなる方が多いでしょう。
事故に遭わなかったら継続的に働いて収入を得られたはずなのに、事故のせいで収入を得られなくなって損害が発生します。
その損害を「逸失利益」として相手に請求できるのです。
逸失利益を請求できるのは、基本的に「事故前に働いて収入を得ていた人」です。
ただし主婦や主夫などの家事労働者、子どもや学生、一時的に失業していた人も逸失利益を請求できる可能性があります。
逸失利益の計算式は以下のとおりです。
逸失利益=事故前の年収×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
事故前の年収
事故前の年収は、基本的に事故前に得ていた実年収を基準とします。
サラリーマンなら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書の記載内容によって年収額を確定できるでしょう。
家事労働者や子どもの場合、「賃金センサス」という統計資料の平均賃金を使って算定します。
失業者の場合には、以前の勤務先での収入や平均賃金を考慮して定めるケースが多数です。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、その後遺障害によってどの程度労働能力が失われたかという割合です。
後遺障害の等級が高くなるほど労働能力喪失率も上がります。
後遺障害4級の場合の労働能力喪失率は92%とされています。
9割以上が失われているので、労働能力はほとんど残っていないといえるでしょう。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数
逸失利益は「本来なら働いて得られたはずの収入」なので、請求できるのは、「就労可能年数」に対応する分です。
ただ就労可能年数をそのままかけ算すれば良いわけではありません。
「ライプニッツ係数」という数値によって調整が行われるので注意しましょう。
収入は、本来毎月、毎年将来にわたって継続的に得ていくはずのものです。
しかし逸失利益を受け取るときには、将来分を一括で受け取ることになります。
本当は将来にしか得られないのに先にまとめて受け取ると、本来は得られないはずの「運用利益」が生じてしまいます。
そこで逸失利益を計算するときには、運用利益を差し引くための指数をあてはめねばなりません。
それがライプニッツ係数です。
後遺障害逸失利益の計算例
【30歳、年収400万円のサラリーマンが交通事故で後遺障害4級となった事例】
この場合、後遺障害逸失利益の金額は以下のとおりです。
400万円×92%×22.167=8,157万4,560円
被害者は加害者や保険会社に対し、慰謝料とは別に8,157万4,560円の逸失利益を請求できます。
後遺障害4級で慰謝料を増額する方法
後遺障害4級が認定されたとき、自分で任意保険会社と交渉すると通常は高額な慰謝料を受け取れません。
保険会社にとっては、なるべく支払保険金を減らした方が利益となるためです。
慰謝料を増額するには「弁護士基準」によって慰謝料を計算する必要があります。
弁護士基準とは
弁護士基準とは、弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準です。
実は交通事故の慰謝料算定基準には「弁護士基準」「任意保険基準」「自賠責基準」の3種類があり、この中で「弁護士基準」がもっとも高額になります。
被害者が自分で任意保険会社と示談交渉するときには、通常低額な任意保険基準が適用されます。
すると慰謝料の金額を大きく減額されてしまうでしょう。
たとえば後遺障害4級の後遺障害慰謝料は、弁護士基準なら1,670万円程度ですが任意保険基準なら800万円程度にしかなりません。
2分の1以下に減額されてしまいます。
弁護士基準を適用する方法
弁護士基準を適用するには、示談交渉を弁護士に依頼する必要があります。
どうしても弁護士に依頼せずに弁護士基準を適用してもらいたいなら、裁判を起こすしかありません。
被害者が1人で裁判を起こすと適切な対応をできる不利になってしまう可能性が高くなるでしょう。
結局裁判に負けて充分な慰謝料を受け取れない結果になりかねません。
交通事故で被害者が適正な金額の慰謝料を受け取るには、弁護士に示談交渉を任せる方法がベストといえます。
交通事故で重篤な後遺障害が残ったら、必ず弁護士に相談してみてください。
重度の後遺障害が残ったときの注意点
その他、賠償金の請求には時効があるから、その点も注意しておこう。
4級に該当するほど重度な後遺障害が残ったら、以下のような点に注意して行動しましょう。
後遺障害認定を確実に受ける
まずは後遺障害認定を確実に受けることが重要です。
等級認定されなければ後遺障害慰謝料も逸失利益も払ってもらえないからです。
大幅に賠償金額を下げられてしまうでしょう。
後遺障害認定を受けるには、検査資料や後遺障害診断書などの医証を集めなければなりません。
専門病院へ通って必要な検査を受け、症状に詳しい医師に診断書を作成してもらって適切に対応を進めましょう。
専門医と交通事故に詳しい弁護士に連携してもらえば、適切に後遺障害認定を受けられる可能性がグッと高まります。
任意保険会社の言いなりにならない
任意保険会社との示談交渉の際にも注意が必要です。
示談交渉の際には、被害者と加害者の互いの過失割合を定めなければなりません。
このとき、保険会社は被害者側へ不当に高い割合を押しつけてくるケースがあるので注意しましょう。
また治療期間が長引いたり被害者がうつ病になったりすると、被害者側の素因による減額を主張してくる可能性もあります。
示談交渉時の保険会社の主張は、必ずしも適正とは限りません。
弁護士が示談交渉に対応したり裁判したりすると、判断が変更されるケースが多々あります。
保険会社の言い分に少しでも疑問を感じたら、鵜呑みにせず交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
損害賠償請求権には時効がある
交通事故の被害者に認められる請求権には時効があります。
後遺障害が残った場合には「症状固時から5年」が経過した時点で賠償金の請求が封じられてしまうので、注意しましょう。
また自賠責保険の保険金の時効は3年です。
症状固定時から3年以内に請求しないと保険金を受け取れない可能性があります。
時効を止めるには、まずは保険会社に「債務承認」してもらいましょう。
自賠責保険の時効が成立しそうな場合には「時効中断申請書」という書類を差し入れると、自賠責保険が債務を承認し、時効を止めてくれます。
相手が任意保険会社の場合には債務承認してくれないケースもあります。
そういった場合には、裁判を起こせば時効を止められるので、弁護士に依頼しましょう。
何もせずに放置して症状固定後3年、5年が経過すると賠償金や保険金を払ってもらえなくなるおそれがあるので、くれぐれも注意してください。
まとめ
交通事故で重度な後遺障害が残ったとき、1人で後遺障害認定や賠償金の請求を行うのは心身共に大変な負担となるでしょう。
早い段階から交通事故に詳しい弁護士に相談し、手続きを依頼して治療や日常生活への復帰に専念するのが得策です。
まずは弁護士の無料相談を受けてみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。