症状固定って何??
今回の記事では、症状固定とは何か、症状固定と診断された場合に慰謝料を増額する方法について、詳しく見ていこう。
交通事故後、一定期間通院して「症状固定」したら、治療を終了します。
症状固定とは「それ以上治療を続けても症状が改善しなくなったとき」です。
症状固定は慰謝料や損害賠償金の計算に際して非常に重要なタイミングとなるので、どういった場合に症状固定となるのか、その後の対処方法などを正しく押さえておきましょう。
今回は「症状固定」の意味やタイミング、保険会社から症状固定前に治療費を打ち切られたときの注意点や損をしないための対処方法をご紹介します。
交通事故後、後遺症が残ってしまいそうな方はぜひ参考にしてみてください。
目次
交通事故後の症状固定とは
症状固定は、一定期間治療を継続した後、「これ以上治療を続けても状態が良くならない」と医学的に判断された状態です。
交通事故後、リハビリなどの治療を行っても一定程度までしか回復せず「後遺症」が残ってしまうケースが少なくありません。
症状が固まってしまったら、それ以上治療を続けても意味がないので「症状固定」として治療を終了します。
症状固定は、「後遺症の内容が確定して治療を終了すべきタイミング」といえるでしょう。
症状固定の判定方法
症状固定したかどうかは、医学的な判断事項ですから、患者本人や保険会社が決めることはできません。
担当医が適切な時期を判定します。
目安でいうと、むち打ちによるしびれや腰痛、めまいなどの症状は3ヶ月~1年程度、骨折後の疼痛などは3ヶ月~1年半程度となるでしょう。
高次脳機能障害の場合には1年以上となり、中には3年や5年などの長期に及ぶケースもあります。
なお個別のケースにおける症状固定時期は受傷内容や被害者の年齢、基礎体力や治癒力などによって大きく異なるので、上記はあくまで目安と考えてください。
医師と相談しながら適切な症状固定時期を定めましょう。
症状固定と慰謝料の関係
症状固定が慰謝料の金額に影響を与える可能性があります。
交通事故後、治療を続けると「完治」する場合と「症状固定」する場合の2種類があります。
「完治」したら後遺症は残りません。
一方「症状固定」したら、一定の後遺症が残っているのが通常です。
後遺症が残った場合には、自賠責で「後遺障害等級認定」を受けることによって慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。
後遺障害等級認定とは、交通事故後に残った後遺症について、正式に「後遺障害」と認定して14段階の等級をつける手続きです。
認定等級が高くなればなるほど、後遺障害慰謝料や逸失利益は高額になります。
「治療打ち切り」と言われた場合の対処方法
交通事故後の入通院中は、相手の保険会社から治療費を払ってもらえるケースが多数です。
病院へ直接払いしてもらえるので、被害者が窓口で医療費を払う必要はありません。
ところが治療期間が長引いてくると、保険会社から治療費を打ち切られてしまうケースが多いので注意しましょう。
被害者としては治療を続けたいのに費用を払ってもらえないので、保険会社とトラブルになってしまう事例も多々あります。
そんなときには、保険会社からいわれるままに治療を打ち切るのではなく「症状固定」したかどうか確かめてみてください。
症状固定の確認方法
保険会社から治療費打ち切りを打診されても、実際に症状固定しているとは限りません。
保険会社は医学的な判断をしているわけではなく「むち打ちだから3ヶ月程度で症状固定するだろう」などアバウトな判断しかしていないケースも多々あります。
本当に症状固定したかどうかは、担当医に確認しましょう。
痛みやしびれなどの症状が継続しているなら、そういった自覚症状も伝えた上で医師に「症状固定しているのでしょうか?私としてはもう少し治療を続けたいです」と相談してみてください。
医師が医学的な見地から症状固定と判断すれば、症状固定してもやむを得ません。
一方、「それであればもう少し治療を継続しましょう」と判断されたら、症状固定せず治療を継続すべきです。
症状固定前に治療を打ち切るリスク、デメリット
医師が「症状固定していない」と判断したら、症状固定するまで通院を継続すべきです。
途中で治療を打ち切ると、以下のような不利益が及ぶ可能性があるので注意しましょう。
- きちんと治療を受けられず症状が残る
症状固定していないなら、治療の継続によって症状が改善する余地があります。
それにもかかわらず途中で治療を打ち切ったら、完治するはずの症状でも後遺症が残ってしまうリスクが高まります。
症状固定していないなら、まずは完治を目指して治療を継続しましょう。 - 休業損害や慰謝料を減額される
交通事故の休業損害や入通院慰謝料は、「症状固定時までの分」が支払われます。
つまり症状固定までの期間が長くなればなるほど、これらの金額は増額される仕組みです。
症状固定前に治療を打ち切ってしまったら、本来受け取れるはずの休業損害や入通院慰謝料を受け取れなくなってしまうでしょう。
賠償金を減額されないためにも、症状固定時まで通院を継続する必要があります。
治療費を打ち切られたときの通院方法
保険会社から治療費打ち切りを打診されたら、医師の診断書を示して「まだ通院が必要」と主張してみてください。
医師が「通院加療が必要」と診断していれば、保険会社の対応が変わって一定期間治療費を払ってもらえる可能性があります。
それでも打ち切られてしまったときには、別の保険を使って通院を継続しましょう。
一般的には健康保険を適用するのがおすすめです。
1割または3割の負担は発生しますが、全額自費診療となるよりは楽に通院できるでしょう。
病院によっては「交通事故の場合、健康保険を適用できない」といってくるケースもありますが、そういった制限の根拠となる法令や通達はありません。
交渉してもわかってもらえないなら、別の病院への転院を検討してみてください。
交通事故が労災に該当する場合、労災保険から治療費を払ってもらえます。
まだ労災の療養補償給付を申請していなければ、早めに労基署へ申請しましょう。
症状固定後の手続き
後遺障害認定の申請には、相手の保険会社へ手続きをお任せする事前認定と、自分自身で手続きを進める被害者請求があるよ。
症状固定したら後遺障害等級認定を受ける
交通事故後、通院を継続して医学的な意味で症状固定したら「後遺障害等級認定」の手続きを進めなければなりません。
症状固定して後遺症が残っても「後遺障害等級認定」を受けなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を払ってもらえません。
単に「後遺症が残っている」と被害者が主張しているだけでは賠償金増額の根拠にならないのです。
症状固定したら、速やかに後遺障害等級認定の手続きを進めましょう。
医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼して、自分で自賠責へ保険金請求を行うか相手の任意会社に任せれば、後遺障害認定の申請ができます。
事前認定と被害者請求
後遺障害等級認定の手続きには事前認定と被害者請求の2種類があります。
事前認定
事前認定は、相手の任意保険会社に後遺障害等級認定の手続きを任せる方法です。
医師に作成してもらった後遺障害診断書を送れば、あとは相手の保険会社がすべての手続を行ってくれるので、被害者は何もする必要がありません。
とても楽な手続きといえるでしょう。
ただし相対する立場である相手の保険会社にすべてを任せるのは不安があります。
どのような方法で手続きが行われているのか監督する方法もありません。
被害者自身が積極的に追加資料を提出したりもできないので、等級認定において不利になる可能性があります。
被害者請求
被害者請求は、被害者本人が相手の自賠責保険へ後遺障害等級認定を求める方法です。
後遺障害診断書だけではなく、交通事故証明書や事故発生状況報告書、診断書や診療報酬明細書などたくさんの書類を集めなければなりません。
自賠責保険の調査事務所から追加資料の提出を要求される可能性もあります。
このように手間がかかるのは被害者請求のデメリットといえるでしょう。
ただ被害者自身が積極的に資料提出できますし、相手の保険会社に任せる際の不透明感や不安感はありません。
納得できる結果を獲得したいなら、被害者請求がお勧めです。
症状固定後は示談交渉!慰謝料・賠償金を増額するには
弁護士に依頼する事で、弁護士基準で計算することができるから、より多くの賠償金を受け取ることができるんだ。
症状固定後には後遺障害認定や示談交渉を進めなければなりません。
その際、できるだけ賠償金・慰謝料を増額するためにできる工夫をお伝えします。
被害者請求を弁護士に依頼する
後遺障害認定でより高い等級を獲得するには、事前認定より被害者請求が適しています。
しかし被害者には手間がかかるので、被害者お1人では「ハードルが高い」と感じる方が多いでしょう。
そんなときには弁護士に相談してみてください。
後遺障害認定に長けた弁護士に任せれば、面倒な書類集めや調査事務所とのやり取りに対応する必要はありません。
弁護士が効果的な検査資料を集めたり意見書を用意したりしてくれるので、より高い等級の認定を受けやすくなるでしょう。
弁護士に示談交渉を依頼する
後遺障害等級認定後の示談交渉も、弁護士に任せると賠償金額が高額になるケースが多数です。
1つ目の理由として、弁護士と保険会社とで賠償金の算定基準が異なることが挙げられます。
被害者が示談交渉すると低額な保険会社基準で慰謝料が計算されるので、後遺障害慰謝料も入通院慰謝料も減額されるのです。
弁護士に依頼すると高額な弁護士基準で算定されて慰謝料が2~3倍程度にまで増額されるケースが多数となっています。
休業損害や看護費用、逸失利益の計算に際しても保険会社基準と弁護士基準で異なるケースが少なくありません。
過失割合に争いがある場合にも、弁護士に依頼すれば法的に適正な数値に調整してくれるので、不当に被害者の責任を高くされるリスクが低下するでしょう。
弁護士に依頼すると、自分で交渉する場合と比べて賠償金が5倍以上になるケースも珍しくはありません。
何も知らずに単独で示談をまとめてしまうと大きく損をしてしまう可能性があるので、症状固定したら早めに弁護士に相談してみましょう。
まとめ
症状固定と診断されたら後遺障害認定の申請が必要になるって事が良くわかったよ!
弁護士事務所は敷居が高いと感じる人も少なくないけれど、今は無料相談を行っている事務所もたくさんあるから、まずは気軽に相談してみよう。
治療費打ち切りにあったとき、完治せず後遺症が残ってしまったとき、適切に対応できないと後に不利益を受ける可能性が高まります。
自己判断せず弁護士に相談して動けばリスクを最小限にできて、高額な慰謝料や賠償金を受け取りやすくなるでしょう。
まずは一度、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士の無料相談を利用してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。