どうやって対処すれば良いのかな?
今回の記事では交通事故で脅迫や恐喝を受けた!と言われた時の対処法について、詳しく見ていこう。
交通事故に遭うと、加害者の対応が不誠実だったり理不尽な出来事が続いたりして、強い憤りを感じる方が少なくありません。
保険会社が間に入っていても、対応が悪く「加害者へ直接連絡したい」と考えてしまうケースもあるでしょう。
しかし示談交渉であまりに高圧的な態度を取ったり加害者へ直接連絡したりすると「脅迫、恐喝」などと言われてしまうおそれがあり注意が必要です。
今回は被害者が「脅迫」などと言われずに正しく示談交渉を進める方法を解説します。
目次
交通事故で加害者から「脅迫、恐喝」と訴えられるケースがある
交通事故に遭ったら、被害者は加害者へ治療費や休業損害、慰謝料などの賠償金を請求できます。
これらの請求は正当な権利なので、相手に求めても基本的に脅迫や恐喝にはなりません。
ただ法律上正当な権利であっても、悪質な方法で行使してしまったら脅迫や恐喝罪が成立してしまう可能性があります。
脅迫(罪)とは
脅迫罪は、相手に害悪を告知したときに成立する犯罪です。
害悪を加える対象は相手方または相手方の親族です。
害悪の内容は、生命、身体、自由、財産、名誉に対するものです。
脅迫罪となる言葉の具体例
- こっちは歩けなくなった。お前も同じ目に遭わすぞ!
- お前の家族も同じ目に遭わせてやる
- お前の家も財産も全部ぶちこわしてやる
- 社会にお前の悪行を全部ばらすぞ、会社に言うぞ
自己の加害者へ上記のようなことを告げると、それだけで脅迫罪が成立する可能性があります。
恐喝(罪)とは
恐喝罪は、暴行や脅迫を手段として相手に財物を交付させる犯罪です。
交通事故の賠償金であっても、暴行や脅迫によって無理矢理払わせると恐喝罪になる可能性があります。
恐喝罪となる行為の具体例
- 「慰謝料1000万円を払わないとお前の家に火をつけてやる」と告げる
- 「悪質な交通事故加害者であることを世間にばらされたくなければ慰謝料を払え!」と脅す
- 「請求通りの金額を払わないならお前にも同じ目に遭ってもらう」と告げる
- 加害者を呼び出して殴る、または威圧して慰謝料を要求する
- 怒りにまかせて加害者を怒鳴りつけ、怖がらせて賠償金を支払わせようとする
加害者に対して脅迫や恐喝行為をすると、相手から被害届や告訴状を出されて警察沙汰になってしまうリスクも発生します。
脅迫、恐喝になりやすいケース
具体的に交通事故被害者から加害者への脅迫や恐喝行為が行われやすいのはどういったケースなのか、みてみましょう。
加害者が保険会社に入っていない、保険が適用されない場合
加害者が保険に入っていない場合や保険が適用されない場合、加害者と被害者が直接示談を進めなければなりません。
間に保険会社が入らないので、被害者は加害者に対してついつい感情的になってきつい言動をしてしまいがちです。
加害者側に誠意が感じられないと「殺すぞ」「同じ目に遭わすぞ」などと告げて脅迫や恐喝をしてしまう可能性もあります。
被害者の親族が加害者を脅迫、恐喝
被害者本人でなく、親族が感情的になって加害者を威圧するケースもよくあります。
たとえば息子や娘が交通事故に遭ったとき、父親が加害者に対し「誠意が感じられない。慰謝料を払うつもりがないならお前にも同じ目に遭ってもらう」などと言うと、脅迫罪や恐喝罪が成立する可能性があります。
被害者の知り合いが加害者を脅迫、恐喝
被害者が知り合いを使って加害者に連絡を入れる場合にも脅迫罪や恐喝罪が成立しやすいので注意が必要です。
たとえばコワモテの知人や友人に交通事故を相談したところ、相談相手が「自分が代わりに慰謝料を回収してやる」などと言い出して加害者に連絡を入れ「俺は暴力団の構成員だ。〇〇の交通事故で慰謝料を払わないと俺が黙っていないからな」などと告げて恐喝罪が成立するケースもあります。
保険会社を無視して直接加害者へ連絡
加害者が保険に入っていたら、示談交渉は保険会社を通じて進めなければなりません。
しかし被害者が「保険会社が間に入っているから話がなかなか進まない」「加害者が実際のところ、どのように考えているか知りたい」と考えて、加害者へ直接連絡してしまうケースが少なくありません。
保険会社が間に入っているのに被害者から直接連絡が来たら、加害者は焦って冷たい対応をとってしまう傾向があります。
たとえば「すべて保険会社に任せているから何もいえません」「知りません」と言い、謝罪もなしに電話を切ったり完全に無視したりします。
そうなると被害者としては、加害者へ強い怒りを感じるでしょう。
「ふざけるな!お前も5体不満足にしてやる!」「殺すぞ!」などと言ったり家に押し掛けて暴れたりすると、脅迫罪、恐喝罪、暴行罪が成立します。
加害者側の対応に憤りを感じても、感情の赴くままに無茶な行動をとってはなりません。
高額な賠償金を獲得するためにも、冷静な思考で適切な対応を進めましょう。
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脅迫、恐喝してしまった場合のリスク
示談がこじれてしまうし、最悪の場合、逮捕されてしまうこともあるんだよ。
もしも被害者が加害者を脅迫、恐喝してしまったらどういったリスクが発生するのでしょうか?
脅迫罪、恐喝罪で刑事事件にされる
加害者への脅迫や恐喝行為は「犯罪」です。
加害者や加害者の親族に対する「害悪を告知」した場合には「脅迫罪」となり「2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑」が適用されます。
脅迫しただけではなく慰謝料などの「お金」を要求した場合には「恐喝罪」が成立して「10年以下の懲役刑」が適用されます。
相手の家に押し掛けて暴れたり暴力を振るったりすると「暴行罪」が成立して「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」が科されます。
相手をけがさせた場合には「傷害罪」が成立して「15年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」が適用されます。
このように、被害者であっても脅迫や恐喝をすると反対に「加害者」の立場になってしまい、逮捕・起訴されるリスクもあります。
脅迫や恐喝行為は絶対にやってはいけません。
親族や知人が脅迫してもトラブルになる
被害者本人ではなく親族や知人が脅迫した場合でも、トラブルが発生します。
脅迫行為を行った親族や知人に犯罪が成立するのはもちろんのこと、被害者本人にも「教唆犯」が成立する可能性があるので注意してください。
教唆犯に適用される罪は主犯のものと同じ非常に重いものです。
安易に親族や友人に対し「代わりに加害者へ請求してほしい」などと頼むべきではありません。
示談がこじれて支払いを受けにくくなる
脅迫や恐喝をすると、刑事事件にならなくても示談がこじれます。
加害者が怖がって連絡を避けるようになるでしょうし、加害者側が「絶対に支払わない」と決意してしまう可能性もあります。
弁護士をつけられる
加害者を脅すと、加害者側が弁護士を立てる可能性も高くなります。
特に保険会社が間に入っているのに加害者へ直接の連絡を続けていると、弁護士を入れられるケースが多数です。
相手に弁護士がつくと内容証明郵便で警告書が届き、実際に刑事告訴される可能性も高くなります。
被害者が加害者に「つきまとっている」とみなされると「接近禁止の仮処分」などを申し立てられて裁判所から「加害者に近づいてはならない」という命令が届くケースもあります。
被害者が加害者を脅しても良いことは1つもありません。
加害者を許しがたい思いがあっても「脅す」のではなく正当な方法によって賠償金を支払わせましょう。
どうしても腹が立ったときの対処方法
その他にも、加害者の刑事裁判に参加して加害者が反省しているのかどうかを確かめるという方法もあるんだ。
直接加害者と話しをすると恐喝や脅迫に繋がってしまうことがあるから、対応を弁護士にお任せする方が安心だね。
加害者の対応が不誠実で腹が立ったとき、被害者としてはどのように対応すれば良いのでしょうか?
加害者を刑事告訴
まずは加害者を刑事告訴する方法があります。
人身事故を起こした加害者は、自動車運転処罰法違反で刑事事件になります。
被害者からの告訴があると「悪い情状」となって加害者へ下される処罰が重くなり、ペナルティを与えられます。
刑事告訴したいときには、告訴状を作成して、管轄の警察署や検察庁へ提出しましょう。
加害者の刑事裁判に参加する
加害者により重い処罰を与えてほしい場合、加害者の刑事裁判に参加する方法もあります。
過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪の被害者は、加害者の刑事裁判に参加して証人尋問を行ったり裁判官・裁判員へ心情や意見を述べたりする権利を認められます。
- 加害者が何を考えているのかわからない
- 反省しているのかどうか知りたい
- どんな刑罰になるのか確認したい
- 自分の思いを裁判官に聞いてほしい
こういった思いがあるなら、検察官に申請をして加害者の刑事裁判への被害者参加手続を進めてみてください。
妥協せずに高額な賠償金を請求
大きな交通事故を起こせば、加害者は莫大な賠償金を払わねばなりません。
被害者が加害者を「許せない」と思うなら、なるべく高額な賠償金を払わせる方法が有効です。
加害者や保険会社から示談金の提示があっても簡単には妥協せず、粘り強く交渉して可能な限り高額な賠償金を支払わせましょう。
弁護士に対応を依頼する
交通事故の被害者が加害者への損害賠償請求や刑事告訴、刑事裁判への被害者参加などの手続きを進めようとしても、1人では対応が難しいと感じるでしょう。
自分で対応するとどうしても感情的になってしまう方もおられます。
そういったケースでは、弁護士を代理人に立ててみてはいかがでしょうか?
示談交渉を弁護士に任せればほとんどの事案で賠償金が大幅に増額されます。
また刑事被害者参加手続きも弁護士に代理人を依頼すれば、尋問や意見陳述などの際に的確な対応をできて、裁判官や裁判員に「重く処罰してほしい」という気持ちを伝えやすくなります。
トラブルを避けて有利に解決するには交通事故に詳しい弁護士によるサポートが必要です。
困ったときには1人で悩まずに相談してみてください。
相手から脅迫、恐喝されたときも弁護士へ相談
ここまでは被害者が脅迫、恐喝を行ってしまうリスクについて解説してきましたが、反対に被害者が加害者側から圧力を受けるケースもあります。
加害者や加害者の知人から脅されるケース
- 加害者に保険会社がついていない事案で直接賠償金を請求しようとしたところ、加害者から「それ以上請求するならお前も家族も無事では済まない」などと脅される
- 加害者が暴力団風の知人や友人を使って慰謝料請求を封じ込めようと脅してくる
保険会社の担当者から圧力を感じるケース
- 加害者側の保険会社の担当者が「それは無理です」「あなたの話には筋が通っていない」などと言ってきて、誠意を感じられずストレスを受ける
もしも加害者や保険会社から圧力を感じたら、やはり弁護士を頼りましょう。
弁護士であれば相手が暴力団風でもおびえることはなく、裁判をしてでも法的に権利を実現できます。
弁護士に任せてしまえば相手の保険会社と直接やり取りしないので、ストレスを感じることもありません。
交通事故の被害者が安全かつ適切に権利を実現し、正当な補償を受けるには弁護士によるサポートが必要です。
ついつい感情的になってしまい示談がまとまらない場合、相手との示談がこじれた場合、相手が弁護士をつけた場合など、対応に迷ったときには早めに交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談しましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。